ジェームズ ダイソン アワード 2010 
「日々の『?』からすべてが始まる」

前回に続いて、ジェームズ ダイソン アワード2009年の最終審査に残った作品をご紹介します。このアワードは、ジェームズ・ダイソン氏のコメントを読んでいただければわかるように、決して発明的なものやエンジニアリング的なアイデアだけを求めているわけではありません。

求められているのは、日常において「あれ? おかしいな」と思ったり、「何とかならないものか」と不満を感じたりした事象を解決するイノベーティブなアイデアです。

例えば、上の写真はいろいろな大きさ・形の容器に対応するゴム素材の蓋「Flexi Dex」。詳細は下記ムービーをご覧ください。

「私はデザインを専攻していた学生のときからずっと、さまざまな素材の性質や機能性に魅力を感じていました。Flexi Dexは、ゴム素材の柔軟性を生かすことで、日々の生活でよく目にする問題を解決する新しいアプローチを生み出しました。これこそがジェームズ ダイソン アワードが目指していることです」(ジェームス・ダイソン)。

次は、患者の気道を確保するための器具「Pressure Alert」。医療という専門的分野だからこそ、機能性を追求した結果です。

「医療機器をデザインする際には、精密であること、それから人体構造を熟知していることがとても大切です。その点、Pressure Alertは、患者の気道を確保するための気管内チューブと呼ばれる既存の器具に着目した作品ですが、挿管時に、気管が傷つくなどして危険な状態に陥ることを避けるため、医師に患者の危険度を知らせるノズルを備えています。シンプルな器具ですが、患者のリスクと生命の安全を守るために考案された作品です」(ジェームズ・ダイソン)。

次の折り畳み自転車「Contortionist」のように、自らの趣味の分野において発想とイノベーションを広げたものもあります。

「Dominicという学生が考案した、この折り畳み式自転車は実に精巧にできています。無理な力を加えることなく、自転車を自在に折り畳める柔軟性が本当に魅力的です。クリエイティブなエンジニアリングとは、まさにこのことだと思います。なかでも、フロントタイヤが回転し後輪と重なることで、すべてのパーツが両輪の間に収まる点は、特に着目すべき点だと思います」(ジェームズ・ダイソン)。

今年も2〜3月にかけてあちこちで卒業制作展が催されましたが、それら作品の中にも、昨年のファイナリストに負けないものがいくつもありました。ジェームズ ダイソン アワードでは、卒業制作、課題作品でも応募可能とのこと(ただし、産学協同の取り組みで企業のサポートを受けていたり、知的財産権が本人に帰属しないもの、他アワードで受賞のものはNG)。

繰り返しになりますが、本アワードは決して最先端のテクノロジーを欲しているわけではありません。まず求められているのは「視点」、つまり日々の生活で流されることなく疑問に思うこと、何かおかしいと感じるマインド。そしてそれを解決するために突き詰めていく姿勢です。

ジェームズ・ダイソン・アワード2010概要は以下のとおり。

テーマ:日常での問題を解決するアイデア
募集期間:2010年2月2日(火)〜7月1日(木)
結果発表:2010年10月5日(火)予定
賞品:最優秀作品 1作品
●ジェームズ・ダイソン・アワード トロフィー
●受賞者に賞金約150万円(受賞時の為替相場に準じて変動)
●受賞者が在籍または卒業の教育機関に寄付金約150万円(同上)
●英国、またはマレーシアのダイソン研究施設訪問
国内最優秀賞 1作品
●英国またはマレーシアのダイソン研究施設訪問
応募資格:工業デザイン、プロダクトデザイン、エンジニアリングを専攻の学生、または卒業後4年以内の卒業生。

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