ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
ドイツ館のコンセプトは3R

1)ゴミの発生を減らす 2)再使用する 3)資源として再利用する。この優先順位で廃棄物を削減しようというストラテジーが「リデュース・リユース・リサイクル」の3R。普段は自治体の廃棄物回避運動のパンフレットなどで目にしますが、この3Rの原理を建築に当てはめるとどうなるのかがヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展でドイツ館が掲げたテーマでした。

老朽化した建築物に対する既存の価値観をラジカルに改め、どんなに醜悪な既存建築であっても、何らかのクオリティが潜在しているはずと、スクラップ&ビルトを回避し、知的でコンセプチュアルなデザインで、修築・増築・改築・復元・保存していこうという呼びかけです。

毎年ドイツでは建物の解体から8,000万トンの廃棄物が出ます。その半分は主に道路建設材料としてリサイクルされていますが、現状のままでは近い将来に建築廃棄物量が建材需要量を越えてしまい、建築廃棄物の問題がますます深刻になります。しかし、悪いのは建物ではなく、建物に対する私たちの考え方に問題があるのではないか。今回のドイツ館では、そんなパースペクティブの変換を問いかけているのです。既存建築のトランスフォーメーションやエボルーションを総称する適切な表現がドイツではまだ確立していませんが、既存建築を進化させていくということから、日本語なら“新築”ならぬ“進築”といえるかもしれません。

住民との対話でリフォームされた1960年代のアノニマスな団地や、東ドイツ時代のトリコタージュ製造工場のリユース、ミュンヘンオリンピック村の学生寮リフォームなど、エリカ・オーヴァーメーアがプロジェクトの真髄を独自のアングルで捉えたドキュメンタリータッチの写真で16の模範例が紹介されています。ビエンナーレ開幕前は「こんなみすぼらしい建築を見せてはドイツの恥ではないか」などと、コミッショナーを務めた建築家ムック・ペツェットへの批判もありましたが、蓋を開けると「ドイツの都市の未来にとって避けることのできない現実へ立ち向かうためのマニフェスト」と多くの賛同を獲得しました。

しかし、このとても地味な内容をいったいどのようにエキシビションとして伝達するかが鍵でもありました。そこで今回のエキシビションデザインを担当したコンスタンティン・グルチッチに現地でインタビューしましたので、次回はその模様をお伝えします。(文・写真/小町英恵)

この連載コラム「クリエイティブ・ドイチュラント」では、ハノーファー在住の文化ジャーナリスト&フォトグラファー、小町英恵さんに分野を限らずデザイン、建築、工芸、アートなど、さまざまな話題を提供いただきます。今までの連載記事はこちら