シリーズ第3回「LIVING & DESIGN 2015」を語る
【finger marks(フィンガーマークス) 編】

10月14日(水)から大阪南港ATCホールで始まる「LIVING & DESIGN 2015」。住空間を彩るさまざまな商材が並ぶ会場で、今年はリフォームやリユースを促進する “仕組み”をアピールする企業が散見できるのも特徴でしょう。出展者にフォーカスして見所を紹介するシリーズの第3回は、京都を拠点に家具の製造販売や修繕を展開するフィンガーマークスです。

2002年に京都・中京区にオープンしたフィンガーマークスは、「家具クリニック」と銘打ち、修理やメンテナンスなどを前面に打ち出したショップとして知られています。木工、塗装、椅子張りといった専門技術を要する職人を抱え、ワンストップで多様な家具のニーズに応えられるのが同店の強み。会場ではそのノウハウをフルに生かして開発したオリジナル家具の展示のほか、個人間で家具の売買を手軽に行える新たなマーケットプレイスの立ち上げについても発表を行う予定です。フィンガーマークスを運営するフィールドアロー社代表の矢野雅也さんは、「中古家具の流通を促進させることで、潜在的な買い替え需要を掘り起こしたい」と話します。

▲ フィンガーマークスが展開する家具の流通・ビジネスモデルを示すチャート。「つくる・販売する」「直す」「借りる」「下取りする」をワンストップで展開し、家具との多彩な付き合い方を提供します。

クルマの流通モデルを家具に導入

私たちが目指しているのは、クルマの流通モデルを家具にあてはめることです。メーカーがいて、系列の修理工場があり、下取りと中古車を販売する体制が整っている。この3つの軸を用意することで、ライフステージに応じて家具との付き合い方における多彩な選択肢が提供できると思っています。1つのモノを長く大事に使い続ける価値観が広がっていますが、同時に、タダ同然で引き取られる中古化した家具にも正当な評価を与え、手を入れることや流通整備によって再価値化したものを新しい使い手のもとへ届けることも重要です。料理やサービスだけでなく、空間の面でも高レベルのデザインを提供したいという飲食店などに対しては、予算を抑えて家具を導入する方法として、新品はもちろん、こうした修繕済みのものを家具シェアリングのかたちで利用いただける「share finger」というサービスを提供しています。すでに北海道から九州まで50店舗以上に導入してもらっています。所有はせず、必要な価値(時間)に対してのみ支払いをする。そういう意味で、カーシェアリングの概念に近い取り組みです。

2002年に家具に関連した事業を始める際、何を自分たちの強みとするかを考えました。取り扱う家具のラインナップ、オリジナル製品の開発……後発の私たちがそれで本当に他社との違いを出せるのか。悩んだときに思いついたのが「中古、修繕、オーダー」でした。いいものが正しく流通するためには、新しいものを送り届けるだけでなく、大切に使われてきたものの価値を修繕によって保全すること、そして手放す際にはその価値を誰かにきちんと継承できる仕組みがあることが不可欠です。家具の入口ではオーダーで希望を叶える消費を実現し、修繕で価値を保全し、出口では気持ちよく家具を手放することができ、時には賃借も可能。お客様との間にこうした多彩な接点を持つことで、大量生産品の流通とは一線を画した流通ビジネスが実現できると考えています。

▲ 会場ブースでは、昨年から製作に取り組んできたオリジナル家具の展示も予定。自社の強みという「修繕」の考え方がデザインや加工に盛り込まれているのが特徴です。

新たな家具流通の仕組みを全国に

LIVING & DESIGNには今回初めての出展となります。ライフスタイルに合わせて家具をリメイクするという私たちの発想と、暮らし方から住空間のリノベーションを促進しようという同展の考えに共通した想いが感じられたこと。また、私たちの取り組みを主催者側に共感いただけたことが、出展を決めた大きな理由です。同時に、昨年から取り組んできたオリジナル家具が完成し、展示できる“モノ”が揃ったことも大きかった。これらの家具は、コストのかかる1次加工を主にベトナムで、組み立てや加工を自社工房で行っています。修繕で磨いたノウハウをデザインや加工に盛り込み、例えばカウンターチェアの足掛け部など損傷が見込まれやすい部位はパーツの交換で簡単に対応できるようにしています。木の部分は無垢材なので、汚れがついたときはヤスリをかけて削ったり、オイルを塗り直すなどで新しい表情を出すことができます。

とはいえ、私たちが追い求めているのはモノそのものではなく、新たな家具流通のあり方です。その点はしっかりアピールしたい。オリジナルの家具でも、デザインが普遍的で、構造が修繕可能で、素材が修復しやすい点などに注目してほしいですね。リテール関係の方には、家具ショップと連携し、修理や下取りとその見積もりを行う「家具クリニック」にも注目してほしいと思っています。クリニック事業は、価格や品揃えとは別の観点で小売店の価値を引き上げる要素になると思っています。「以前に家具を購入したあのお客様の家具はそろそろ修善が必要な頃かもしれない」。修繕に取り組むことで、商品を売った後も購入者とつながりを持つことができます。修理は面倒だからやりたくないと考える小売店も少なくありませんが、京都で培った私たちのノウハウスを雛形に、この仕組みを全国に広げていければと思っています。

▲ フィンガーマークスを運営するフィールドアロー社 矢野雅也社長。「今後ショップのほうでは、目地払いやオイルワックスの仕上げ、シリアルナンバーの打刻など、作業工程の一部をお客様自身にやっていただく体験型販売も展開していきたい」と話します。

新事業の発表を、会場で予定

会期2日目となる15日(木)の12時30分から、会場中央のサロンスペースにて、新事業発表のプレゼンテーションも予定しています。近くローンチする、ネットを介した中古家具の売買のサイトオープンについて話をします。オークションサイトでもこうした行為はすでに行われていますが、私たちのサイトでは、出品された家具のコンディションや修繕に関わる費用などの情報を加えて、利用者同士が売買交渉をしやすくする仕組みも取り入れます。購入した品を修理したい場合は、その作業は私たちが請負うこともしますし、決済代行機能なども用意します。利用者が安全・安心に取引を行える点で、これまでにないサービスだと思っています。

今、木製家具の国内市場規模はおおよそ8,800億円ぐらいです。私たちは、そのうちの3割程度が修繕してもいいような品質のものだと考えています。一度高級な家具を買うと十数年手放さないとよく言われていますが、そのなかには生活環境が変化したにもかかわらず、かなり無理をして同じ家具を使い続けている方も少なくないでしょう。簡単に家具を売却する仕組みがあれば、我慢することなく、環境に見合った新しい家具を手にすることができます。売却の仕組みが整うことで、新品家具の流通スピードは逆に上がるのではないでしょうか。そうした流通インフラを整えることで、私たちは少しでもこの業界を活性化できればと思っています。こうした取り組みやサービスの仕組みもしっかり説明しますので、ぜひブースに立ち寄ってください。(文/編集部・上條昌宏)

LIVING & DESIGN 2015
会期:2015年10月14日(水)~16日(金)
時間:10:00~18:00 (最終日は17:00まで)
会場大阪南港ATCホール(大阪市住之江区南港北2-1-10)
入場料:1,000円(招待状持参者、事前登録者は無料)
問い合わせ先:LIVING & DESIGN 実行委員会 事務局
info@living-and-design.com

フィンガーマークスのブースは、正面エントランスから入り、真っすぐ奥に進んだ突き当たり、30番コーナーになります。

* フィンガーマークスを運営するフィールドアロー社 矢野雅也社長の新事業プレゼンテーションは、10月15日(木)の12時30分より、LIVING & DESIGN会場中央のサロンスペースにて行われます。こちらもお見逃しなく。

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