nendoとTakram

日本から新たな地平に踏み出そうとする
デザイン組織の道標。

Message

編集長からのメッセージ

今号の特集は「nendoとTakram」です。

デザインにおいて多視点を提示している両社は現在、プロダクトデザインにとどまらずサービス開発や事業戦略に至るまでさまざまなプロジェクトを手がけています。海外に足場を広げ、グローバルに存在感を高めているのも両社に共通する点でしょう。

そんなふたつのデザイン組織をあえて「と」でつなぎ、好対照として取り上げたのには狙いがあります。

ひとつは、双方を見比べることで、互いの立ち位置や個性がいっそう際立つと考えたこと。共に「今までにないオリジナルの価値を創造する」という目標を掲げ、スタッフやメンバーが生き生きとワークできるための組織マネジメントにも力を注いでいます。しかし、そのアプローチや手法には独自性が垣間見えます。

もうひとつの狙いは複数の答えを示すことでした。「日本から世界最高のデザイン組織をつくる」。そんな目標に向け、ひとつのルートではなく、ふたつの道筋を示す、あるいはそれぞれの特徴を掛け合わせて、後につづく人たちが新たなルートを自ら開拓できる余地を残したいと考えました。

普段はつながらない者同士が誌上を通じて接点を持ち、似た属性同士で形成されがちなデザイン組織のありさまを少しでも揺さぶることができれば……。アイデアや人の新しい結合によって新たな価値創造を目指すnendoとTakramの活動を通して、これからのデザイン組織のあるべき姿を見出していただければ幸甚です。

上條昌宏 

020

nendoとTakramが大切にしている10のキーアイデア

両社のデザイン指針とも言えるキーアイデアは変化を追い求める価値観とは異なる、持続する価値でもあります。それぞれが密接に絡みあい、新たなデザインが発想されています。

036

人材とそれを生かす組織運営

共にスタッフ数が50名を超え、その陣容も多彩なnendoとTakram。若手から中堅やベテランまでどんな人材がスタジオの活動を支え、未来を担うのでしょうか。赤坂と表参道のオフィスに5日間通い詰め、nendo7名、Takram10名、計15時間17名に話を聞きました。これまでメディア露出の少なかったスタッフを中心に紹介するとともに、人を生かす組織運営に迫ります。

060

クライアントが語る

手がけるプロジェクトの数も種類も幅広いnendoとTakram。各シーンで協業するパートナーたるクライアントとの出会いから関係性にいたってもさまざまなストーリーがあります。クライアントたちの言葉から浮かび上がる両社の「らしさ」があるはずです。

青井 浩(丸井グループ代表取締役社長CEO)/黒田英邦(コクヨ代表取締役社長)/畠山陽二郎(経済産業省 商務・サービス審議官)/松本恭攝(ラクスル代表取締役社長CEO)

064

佐藤オオキ インタビュー

これからどんなものを社会に生み出せるのか、20年間で今がいちばんワクワクしています。

創業から20年を迎えたnendo。世界中から依頼が舞い込む、押しも押されもせぬデザイン事務所となった今も、「デザインの可能性を広げたい」という好奇心は衰えません。一方で、組織も人も生き物。いずれ訪れる組織と自身のピークにどう対処するかという、新たな課題に向き合う時期にも来ているそうです。

072

Takram インタビュー

やっていくなかで自分たちが知らなかった新しい可能性がきっと見つかる。そこが僕らのルーツ。

社会構造が大きく変わり、求められる人材も多様になるなか、専門性を超えた複眼的な思考をもつ「越境人材」を束ね、社会変革を企業とともに創造するTakram。インタビューでは、彼らが見据える未来のデザインとそれを生み出す組織のかたちを聞き出します。

081

LEADERS

森田真生 独立研究者

京都に「鹿谷庵(ろくやあん)」というラボを構え、数学を軸とした思考を大学などに属することなく在野で探求している森田真生さん。数学とは狭義では数や図形の研究であるが、森田さんいわく「まだ意味も解釈もないものを追究し、思考の環境を改変しながら、その外側の可能性を追求していくもの」。今世界は、個を中心とした強い主体という発想からの抜本的な転回(ターン)が起きつつあり、その転回がなければ、これからの時代は正気を保つのも難しいのではないかと森田さんは語る。その視点が捉える未来とは、予想外のものであった。

086

Sci Tech File

海に漂い岩に封じ込められた放散虫の謎に満ちた美の摂理

5億年前から地球上に存在し、今も800〜1,000種が世界中の海を漂っている単細胞生物、放散虫。化石になったその骨格を顕微鏡で覗くと、殻から突き出たトゲや極小の穴の並びに、何か美的秩序のようなものを感じずにいられない。その精緻な造形美は、進化学者のエルンスト・ヘッケル(1834〜1919)が描いたイラストレーションでも広く知られているが、その生態は謎だらけだという。放散虫とはそもそも何ものか? 放散虫研究の第一人者で、新潟大学理学部理学科教授の松岡 篤氏を訪ねた。

092

INSIGHT

ドバイ万博に出現した緑の実験場

およそ1年遅れの2021年10月1日に開幕したドバイ万博。この砂漠の地に鮮やかな緑が生い茂る構築物を出現させたのは、シンガポールのランドスケープデザイン事務所、サラダ・ドレッシングだ。ユニークな名前もさることながら、これまでのランドスケープデザインの領域の拡張を試みる彼らの考えを探った。

098

INSIGHT

SANU CABINが示す、山とつながる建築

八ヶ岳や白樺湖に拠点を持つセカンドホーム・サブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」。2021年11月のサービス提供以前から会員枠が埋まり、キャンセル待ちが1,000人以上出るほど人気となった。その「SANU CABIN」の設計、施工を手がけたADXの安齋好太郎に、この場所で体現した、自身が建築を通じて目指すものを聞いた。

AXIS Vol.215

nendoとTakram

世界に羽ばたくふたつのデザイン組織を徹底解剖

2021年12月28日 発売

1,800円(税込)

amazon.co.jp fujisan.co.jp
※富士山マガジンサービスが提供するデジタル版「AXIS」のバックナンバー(176号/2015年7月1日発売号以降)から最新号までを無料でご覧いただけます。
その他、定期購読に関するお問い合わせは「富士山マガジンサービス カスタマーサポート」まで。
E-mail:cs@fujisan.co.jp
こちらもおすすめ