ドイツ・ケルンの芸術協会で吉岡徳仁の個展が開催

吉岡徳仁さんがドイツの隔月雑誌『A&W Architektur und Wohnen』のデザイナー・オブ・ジ・イヤー2011を受賞し、ケルンの芸術協会(クンストフェライン)で個展が開かれました。毎年1月、国際家具見本市の期間中は、ケルンの街でも、パサージェンをはじめさまざまなインテリアデザイン関連の展示会やイベントが目白押しですが、パサージェンのプログラムの中でもデザイナー・オブ・ジ・イヤー展がハイライトになります。雑誌名は「建築とリビング」の意味で「アーヒテクトゥーア・ウント・ヴォーネン」と読みます。

過去にも何度か芸術協会の同じスペースでデザイン展が開かれました。でも今回ほど建築と調和したことはなかったため、常設展にしたいくらいだという声もあれば、会期が1週間と短いのを残念がる人も多数いました。芸術協会の建物は第二次世界大戦後の1940年代末にブリティッシュ・カウンシルのために建設されたもの。ケルンの人々には通称「ディー・ブリュッケ(ザ・ブリッジ)」と呼ばれています。ケルンのオペラハウスの建築家でもあるヴィルヘルム・リプハーン(1889〜1963)の設計でケルンに残るミッドセンチュリーモダン建築の代表作です。

展示ホールは元々は図書室で、読書コーナーに自然光がたっぷり入るようにフロントもバックもガラス張りでアクアリウムのような空間。空間も展示された家具もすえてが霧に包まれて、手探りで遥かな記憶を辿っていくように霧の中を歩み進み、そこここでちょっと寄り道して、吉岡さんの過去10年の家具デザインを謎解きしていきます。奥の白い光の壁が光とともに磁力を放っているかのように引きつけます。光の壁にふわっと入ってみたくて透明人間でないのが悔やまれました。霧の微細な水滴の1つ1つからアンビエントミュージックが響いてきて、そのサウンドが身体に降り注ぐ感覚です。

他の来場者が展示を体験しているシーンをボーッと眺めるのもいいもの。色付きの生身の人間から次第にグレーの影絵に、3次元からグラフィカルな2次元の世界に移っていきます。透明なアクリルに天井照明の白い光のラインが映し出されると、家具はその光を存在させるためだけにデザインされたと信じたくもなります。

ところで会場に流れている音楽は何なのか? 係の人に尋ねたものの、誰も知らない。あの心地よいサウンドが何だったのかはいまだに謎のままです。(写真・文/小町英恵)

この連載コラム「クリエイティブ・ドイチュラント」では、ハノーファー在住の文化ジャーナリスト&フォトグラファー、小町英恵さんに分野を限らずデザイン、建築、工芸、アートなど、さまざまな話題を提供いただきます。今までの連載記事はこちら