プロダクトデザイナーの清水久和さんは多才だ。カメラやドライヤー、化粧品のボトルといった工業製品のデザインを手がける一方で、瀬戸内国際芸術祭の作品「オリーブのリーゼント」や数量限定のアートピースを積極的に発表している。さらに、日常のなかにある多くの人が気にも止めないような物の魅力を探るリサーチプロジェクト「愛のバッドデザイン」、独自の3Dデザイン手法「コンティニュアスデザイン」を提唱するなど、稀有な魅力を放ちつづけているデザイナーのひとりだ。

今秋、長崎県美術館で開かれた個展「清水久和のデザイン」では、初期の作品から最新作までが一堂に揃っていたが、その展示室の周囲に連なっていた美術館らしいアート作品にも引けを取らない、強い個性を発揮していた。

▲2021年9月15日〜11月21日に開かれた長崎県美術館「清水久和のデザイン」展より

現在、21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で開催中の「REMOTE WORKS @ 21_21 01:清水久和 (S&O DESIGN)」は、清水さんが会場でリモートワークをしつつ、数々の作品を展示販売するというもの。つまり、デザイナーとじかに話ができることが魅力だ。

長崎県美術館の展示作品の大半が巡回しており、さらなる新作も披露されているとのこと。清水自身が「今はもうこんな作品はつくれない」と語るほど奇想と冒険に満ちた初期の代表作「チューチューシャンデリア」（棒状のアイス「チューチュー」を333本吊るしたシャンデリア）がないのがやや残念だが、チューチューのフロアスタンド照明やリアドロ製の「ヘアスタイルランプ」といった照明器具が充実している。もちろん、代表作である「鏡の髪型」や「髷貯金箱」がずらりと並んでいる。

さらには、暮らしに身近なアイスクリームスプーンや磁気の器といったテーブルウェア、木製やスチール製の家具、さらにはチョコレートまで、さまざまな製品や作品にあふれた空間が仕上がっている。

▲長崎県美術館での「チューチューシャンデリア」。21_21 DESIGN SIGHTでは、別のチューチュー作品が展示されている