特集
インハウスデザインの2025年モデル
企業におけるデザインの役割は、今、静かに塗り替えられています。表層ではなく構造を、単発のプロジェクトではなく仕組みを、そしてコンセプトではなく意味をつくる。そんなインハウスデザイナーの活動は、技術と社会、個と組織、戦略と文化のあいだを行き来しながら、新たな創造と組織のモデルを編み出しつつあります。
2025年現在、インハウスデザインはどこへ向かっているのか。その更新の実像と未来像を4つの章を通して読み解きます。
Vol.233 | 2025年07月01日 発売 |
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定価: | 2,500円 |
表紙: | 武井祥平(nomena) |
016
COVER STORY
武井祥平(nomena)
エンジニアリングでデザインに驚きと感動を与えているnomena(ノメナ) 。デザイナーや企業のアイデアをその技術力で支え、見る人を惹き付ける表現へと導いている。話題を呼ぶ作品にはnomena が関わっていることが多く、頼りになる陰の立役者であるが、近年はデザインの新領域をつくり出したクリエイターとしても注目されている。2024毎日デザイン賞を受賞。その広域な活動から「nomenaの影響力はすでに多方面に広がっている」と評された。印象に残るデザインは、創設者の武井祥平の哲学が生み出している。
032
序論 これからのインハウスは、何をデザインするのか?
社会における「座標」と「アイデンティティ」を探って
企業を取り巻くグローバルな経営環境が激変するなか、組織の成長エンジンとしてインハウスデザインが幾度目かの脚光を浴びている。その現状と背景について、社内外のデザイナーが語った。30年以上にわたり日立製作所でデザイン畑を歩み、武蔵野美術大学で教鞭もとる丸山幸伸。P&Gやソニーを経て、現在は社外からデザイン経営推進で伴走する戦略デザイナーの佐宗邦威。インハウスデザイナーに期待される役割とは何か、ふたりが迫る。
038
#FUJIFILM
構造色インクジェットがつくる素材表現の新領域
富士フイルムが独自開発した「構造色インクジェット技術」は、色素をいっさい用いず、インク膜内に形成された微細構造が光を反射することでクジャクの羽やタマムシの外殻などと同じ「構造色」を発現させる新技術だ。この技術を用いた企画展「IMPRESS」が今年の3月、表参道のTIERS GALLERYで開催された。デザイン事務所STUDIO BYCOLORを主宰する秋山かおりとのコラボレーションによって実現したこの企画展に、富士フイルムが進める共創的デザインの様相を探った。
056
#IBM
テクノロジー企業のデザイン思考最前線
IBMのデザインと言えばリヒャルト・ザッパーが基本デザインを手がけたThinkPad(現在はレノボ社の製品ブランド)などを真っ先に思い浮かべる人が多いかも知れない。だが、そこからさかのぼること1966年、IBMの2代目社長トーマス・ワトソン・ジュニアが社員に向けて「良いデザインは良いビジネスになる(Good Design is Good Business)」と訴えたときから、実はIBMは社会や企業の課題をデザインで解決することこそがビジネスの本質だったのかもしれない。ThinkPadの初期リリース当時、デザインにも関わり、現在はコンサルティング事業本部のIBM iX(インタラクティブ・エクスペリエンス)で技術理事(ディスティングイッシュド・デザイナー)を務める柴田英喜にIBMにおけるデザインの役割について聞いた。
062
#MERCARI
インハウス組織の再設計 分業と連携を進化させる仕組み
メルカリと聞いて、強力なデザイン組織を想起する人は、まだ多くないかもしれない。しかし同社では近年、CXO(チーフ・エクスペリエンス・オフィサー)制度の導入をはじめ、デザイン、プロダクト、エンジニアリングを横断する連携体制を築き、プロダクト開発の全過程にデザインが組み込まれる構造を整えてきた。急拡大するプラットフォームと向き合いながら、メルカリが追求するのは「持続可能な成長」と「普遍性あるUX」の両立。その内実を2024年にCXOへ就任した成澤真由美に聞いた。
072
インハウス時代があったから
今をかたちづくる“デザインの基本”と“寄り添う姿勢”
フリーランスで活躍するプロダクトデザイナーたちのスキルの根底には、インハウス時代の経験がどのように積み重ねられ、影響を与えているだろうか。それぞれ異なるメーカーに勤務した経験をもつ、柴田文江、鈴木 元、北川大輔の3人が、インハウス時代の仕事や独立の経緯、現在のインハウスデザインとの関わり方について語る。
080
#ARC'TERYX
デザインとエンジニアリング シームレスな関係が生む革新的開発
カナダのアウトドアブランド、アークテリクス。機能性と品質の高さ、洗練されたデザインで、近年その存在感を急速に高めている。2024年5月には、北米以外で初となる開発拠点「アークテリクス東京クリエイションセンター(以下、TCC)」を設立した。そこでは現在15名のクリエイティブチームが、デザインから素材開発、プロトタイプ制作まで、一貫したものづくりを実践している。オープンから1年が経つTCCを訪ねた。
086
組織と個人の健全な関係がデザインも変える?
インハウスでありフリーランスでもある新世代
社会は今、柔軟な働き方を求めている。2019年の働き方改革関連法の施行が副業・兼業を推奨するきっかけとなるが、実際にこれを加速させたのはコロナ禍だ。リモートワークの普及で人々の意識は変わり、社員に自律的なキャリア形成を促す企業が現れる。そんな時代のなか、若いインハウスデザイナーたちは何を考えているか。ここで取り上げる4人は企業に所属しながら積極的に個人活動も行い、国内外で作品を発表する。キャリア初期および学生時代にコロナ禍を迎えた世代の考えとともに、新しい時代の働き方を考えていこう。
112
特集総括鼎談
戦略と創造の交差点: インハウスデザインの次なる使命とは?
デザイン組織は制作の枠を越えて、戦略・制度、そして企業文化を支えるプラットフォームへと進化しつつある。製造業、通信事業、情報サービスの現場でそれぞれ組織と向き合ってきた3人が語るのは、「創造性の成果」を生み出すための構造と思想のアップデートだ。インハウスデザインの役割は、どこまで拡張できるのか。そして何を越えようとしているのか─。モデレーターは、本誌の元編集長であり、現在はインハウスデザイナーとその周辺領域の実践者たちをつなぐ創発の場「NEURON」を企画・運営するAXISの石橋勝利が務めた。
146
スコープ
光とエモーションがつくり出す独自の世界 唯一無二のブランドを目指すアンビエンテック
002
Ambience 気配
伊丹豪
119
LEADERS
宮本我休(京仏師)
126
Global Creators Labs
スタジオ・ウェイン・マクレガー
136
Sci-Tech File
なぜ光る? どう光る? 常識を超えた生物発光の謎に迫る
142
ひとつのピースから
東芝 atehaca IH炊飯器 (2001
154
アフリカの実践者たち
トレヴァー・スティールマン(写真家、クリエイティブ起業家)
160
EYES ON K-DESIGN
チェ・ドジン(クリエイティブディレクター)
170
意思決定のデザイン
ビジネスに実効性のあるインサイトとは/その発見と育み方
174
太古のクリエイティビティ
森から生まれるかたち アマゾン河の文様とビジョン
180
詩的工学演習
モノとの対話が詩を紡ぐ
182
視点モノローグ
暗闇
184
はじまりのはじまり
わからないを拾う
186
クリエイターズナビ
ルイス・マリー、池田晃将、2m26、中島輝道、中原崇志
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