NEWS | 建築
2025.07.30 11:32
Photos by Darko Škrobonja
クロアチアの南部に位置するトロギールは、アドリア海に面した小さな島の港町。その歴史は古代のギリシャやローマにまで遡る。中世に建てられた多数の要塞や宮殿、教会、塔が数多く残る旧市街地は、1997年にユネスコ世界遺産にも登録された。
この町に、老朽化した木造の橋に代わり、歴史エリアと周辺エリアを結ぶ新しい歩道橋がこのほど誕生した。設計を手がけたのは、同国の建築設計事務所 Prostorne taktike。造船で栄えた町の文脈を考慮しつつ、住民の利便性を向上させるインフラ設備を計画した。
デザインの特徴は、地元の造船技術にヒントを得た、わずかに非対称になった双曲放物面を描く鋼鉄製のシェル構造にある。この設計により、橋の高さが抑えられ、傾斜も緩やかになっている。橋自体の厚みも最小限にとどめ、町の景観との調和が図られている。
さらに、ネットを張った開口部が設けられ、橋全体に軽やかさをもたらしている。また、傾斜に沿ってスツールが配置されており、橋を渡る途中で腰を下ろし、周囲の美しい景色を眺めることも可能だ。夜にはスツールのライトアップも行われ、時間を問わず集える公共空間となっている。
そのほか、橋は造船所でプレファブリケーションされ、艀(はしけ)を使って設置場所へ運び、設置期間の大幅な短縮を実現。地元の素材を積極的に使うなど、環境への配慮も行われている。