越境するインハウスデザイナー
組織と個人の健全な関係がデザインも変える?
インハウスでありフリーランスでもある新世代

社会は今、柔軟な働き方を求めている。2019年の働き方改革関連法の施行が副業・兼業を推奨するきっかけとなるが、実際にこれを加速させたのはコロナ禍だ。リモートワークの普及で人々の意識は変わり、社員に自律的なキャリア形成を促す企業が現れる。そんな時代のなか、若いインハウスデザイナーたちは何を考えているか。ここで取り上げる4人は企業に所属しながら積極的に個人活動も行い、国内外で作品を発表する。キャリア初期および学生時代にコロナ禍を迎えた世代の考えとともに、新しい時代の働き方を考えていこう。

北條 英「Is that structure essential?」(2024)。ソファは内部クッション材の交換修理が難しく、最終的に分解されずに廃棄されることが多い。北條は、分解性を考慮した構造と再生利用を前提とした素材を用い、量産を肯定しながらも、そこに潜む矛盾と向き合いたいと語る。Photo by Nick Knight

  • 北條 英(Kokuyo)――自らの殻を打ち破るために向き合う
  • 高田陸央(Panasonic Connect)――着想源が身近にある福井と東京を行き来する
  • 古井翔真(Sharp)――すべてはデザインを深く学ぶために
  • 柳澤星良(Dentsu)――家具デザイナーとしての独立を目指す

北條 英(Kokuyo)――自らの殻を打ち破るために向き合う

2023年、24年と、東京のデザインウィークで完成度の高い作品を発表した北條 英。再生可能なアルミニウムを使い、合理的で拡張性のあるパーツの構造、社会的な課題を扱うプロダクト「Is that structure essential?」で存在感を示した。大学卒業後は、「機能と構造と人がリンクする製品であるオフィス家具をデザインしたい」という思いからコクヨに入社。在学中に各社をリサーチし、社外のデザイナーに頼らず、インハウスデザイナーが一貫して製品開発を担っている製品が多いことに魅力を感じたという。北條にはもうひとつ、独自の条件があった。学生時代に関わったプロジェクトが製品化されていたため、副業を認める企業に進む必要があったのだ。