解体方針の香川県に4.5万筆の署名が保存・利活用の呼びかけ
丹下健三設計「旧香川県立体育館」の未来

香川県高松市にある丹下健三設計の「旧香川県立体育館(通称:船の体育館)」は、香川県が解体の方針を打ち出している。これに対し、解体方針に対する反発と保存の声が急速に広がっており、旧香川県立体育館再生委員会が行う署名活動は開始から約1カ月で4万5千筆を超える支持を集めた。署名はオンラインと紙の両方で受け付けられ、8月31日に高松駅前で実施されたビラ配りでは、わずか2時間で1,764筆が集まるなど、地域住民の関心の高さが示された。

さらに、8月26日には耐震性能や文化的価値に関する専門的な評価資料を提示する記者会見を実施。構造性能評価では、「大地震時にも倒壊の恐れは低く、耐震改修が可能である」との見解が示され、文化庁の文化審議会の建築文化ワーキンググループからの意見も旧体育館の価値を再考する材料として共有された。こうした科学的根拠を伴った説明が加わることで、保存案は単なるノスタルジーではなく、実現可能な選択肢として浮かび上がってきている。

旧香川県立体育館再生委員会は、県との対話の場を求めて公開フォーラムや説明会を重ね、保存と利活用を具体的に検討できる枠組みの構築を訴えている。歴史を失うのか、それとも未来へと手渡すのか──その選択は、私たち一人ひとりの選択に委ねられている。End