京都に誕生したイッセイ ミヤケ「HaaT(ハート)」の新店舗
ディレクター皆川魔鬼子のものづくりを吉岡徳仁が表現

Architecture and Space design: TOKUJIN YOSHIOKA + TYD Photos by Masaya Yoshimura (Copist) © ISSEY MIYAKE INC.

イッセイ ミヤケの数々のブランドのなかでも、テキスタイルデザイナーの皆川魔鬼子が立ち上げたHaaT(ハート)は、刺し子やブロックプリントをはじめとする日本やインドの手仕事と、現在の技術を融合した衣服で知られる。伝統と新しさを兼ね備えた同ブランドが、東京・南青山に次いで2店舗目に選んだ場所が京都。2025年11月21日にHaaT / KYOTOがオープンした。

場所は、烏丸御池駅からほど近い姉小路通。風情のある建物が軒を連ねる通りを歩いていくと、はっとするような柔らかいピンク色の暖簾が目に飛び込んでくる。のちに皆川に聞くと「桜色」だという。町家建築と空間をデザインしたのは吉岡徳仁だ。

「町家の茶色と白の格子模様が連なる街に彩りを添えたい、人々を招き入れるような色を加えたいと思いました。そのとき、桜色はどうだろうと。吉岡(徳仁)さんは東京2020のオリンピック・パラリンピックでトーチを手がけていますが、そこでも桜色がモチーフでした」(皆川)。

店内は100㎡。奥には中庭の借景があり、窓際に鏡を用いることで庇がずっと続いているように見える。

麻の暖簾をくぐると、店内の壁面や什器も、桜色に染まったアルミニウムが用いられている。吉岡が空間デザインを手がけたISSEY MIYAKEのパリ店はオレンジ、ミラノ店はグリーン、ロンドン店はブルーといった具合にキーカラーが定められ、そこでも色を蒸着させたアルミニウムが空間にインダストリアルな印象を与えている。

吉岡は、HaaT / KYOTOのデザインに際して、「未来を映すように輝くアルミニウムの壁と、時を重ねた木材のコントラスト。それは、手仕事の温もりとインダストリアル、伝統と革新といった、異なる質が溶け合い、皆川魔鬼子のものづくりが静かに息づく空間を生み出す。無機質な素材と、丁寧な手仕事の痕跡が共鳴するその空間には、過去と未来をつなぐ、新しいかたちが立ち現れる」とメッセージを発信している。

ハンガーレールが浮いているようにも見える店内。綿サテンの生地に2種類のパターンのブロックプリントを重ねたインド製の「スプリンクルド カビラ」のジェケットやワンピースなどが見える。

皆川によると、桜色は、人の肌にあう温かみのある薄いピンク色だという。黒髪にも、金髪にも、銀髪にも映える色だと語った。

150年ほどの前に建てられた明治期の町家建築は梁などの構造を残しつつ、吉岡が建築そのものを新たに設計した。広々とした間口12mの格子窓から、店内に光が降り注ぐ。一日のうちに刻々と変わる光や陰影を感じられる空間だろう。

徒歩5分圏内には同じく吉岡が空間デザインを手がけたA-POC ABLE ISSEY MIYAKE / KYOTOと、深澤直人が手がけ、KURAのギャラリーを持つISSEY MIYAKE KYOTOも隣接する。

京都の街並みに溶け込みながらも、現代的な存在感を放つ店舗にまたひとつ新しい顔が加わった。End

場所は、京都府京都市中京区姉小路通柳馬場東入菊屋町569。11:00-20:00オープン。