暮らしが育てるコペンハーゲンの街

公園や運河でくつろぎ、自転車でどこへでも行ける。心地良い日常が息づくコペンハーゲンでは今、各地で再開発が進んでいる。人々の暮らしを大切にしながら、どう街を育てているのか。デンマークに2012年頃から住み、今は日本と2拠点で活動するモック・アーキテクツ(mok architects)の森田美紀と小林 優に話を聞いた。

再開発が進むカールスバーグ地区。古い煉瓦の建物と、新しく建設された建物が共存する。デンマークの伝統的なビールメーカー「カールスバーグ」の麦やホップなどの資材保管庫だった建物は、その趣を残したままホテルに改装されている。

多様性と議論が街を発展させる

近年人口が増え、都市規模が拡大しているデンマーク。コペンハーゲンでも各地で再開発が進む。しかしそのあり方は、大都市の開発によく見られる高級住宅や商業ビルの建設ではない、とモック・アーキテクツの森田美紀は言う。

「カールスバーグ地区では、古い工場を壊して集合住宅を多数建設していますが、住民のターゲット層を絞っていません。街が発展するためにはダイバーシティが必要という考え方で、単身者も、家族連れも、高齢世代も住めるような仕組みづくりをしています。学生寮以外で、間取りが画一的なマンションというのはあまりないんです。一部の層だけ集まっても、何も生まれない。いろんな世代がいて、それぞれのニーズが違うからこそ、公園があったり、カフェがあったり、多様な機能が街にどんどん入ってくるんだと思います」。

再開発に伴い、ジェントリフィケーション(都市の富裕化現象)や空き地の活用といった課題も生まれる。デンマークではそれらを行政だけで解決するのではなく、市民が集まって街のあり方を議論することが都市機能のひとつとして重視されている。コペンハーゲン北西部、急速に開発が進む旧工業地帯ノードヴェスト地区にある「デモクラシーガレージ」は、自動車修理工場の跡地を活用して2022年につくられた、民主主義について議論し、考えるための場所だ。イベントが行えるパブリックスペースにはピザ屋やバーもあり、飲食をしながら「街をどう良くするか」を気軽に意見交換できる。スタートアップインキュベーションも併設し、新しい取り組みを試す拠点としても機能する。「デンマークでは各地で、街中にこうした場所が現れる面白い動きがあるんです」(森田)。