コクヨデザインアワード2026、受賞作品が決定
“波紋”をテーマに、個の視点から社会へ広がるデザインを提示

グランプリ 「ノートの素」神成紘樹

コクヨは、プロダクトデザインの国際コンペティション「コクヨデザインアワード2026」の最終審査を2026年3月14日(土)に実施し、グランプリおよび優秀賞を発表した。23回目を迎える同アワードは、若手デザイナーの発掘と企業との共創を目的に2002年に創設され、これまで数多くのプロダクトを社会へと送り出してきた。

今年度のテーマは「波紋/HAMON Design that Resonates」。個人の実感や経験から生まれたアイデアが他者へと共鳴し、社会へと広がっていくプロセスに着目し、未来のスタンダードを構想する提案が求められた。国内外60カ国から合計1,344点の作品が集まり、その中から最終審査に進んだ作品群を対象にプレゼンテーションと模型審査が行われた。

グランプリを受賞した神成紘樹(右)とコクヨ代表執行役社長の黒田英邦。

グランプリに選出されたのは、神成紘樹による「ノートの素」。糊付けされた中紙の束という、製品化される直前の状態に着目し、表紙や分量の選択をユーザーに委ねることで、量産品と個別性のあいだに新たな関係性を見出す提案である。完成品としてのノートではなく、その手前のプロセスを開くことで、使い手・つくり手・売り手それぞれの関与のあり方を再設計する試みといえる。

神成は受賞コメントで次のように述べた。「本作品は、自分が本当に欲しいものは何かを考えるところから始まり、それが世の中に出た際にどのような良い影響を与えられるかというイメージを大切にしながら制作しました。こうして本作品と向き合ってきた思いが、今回グランプリという形で評価されたことを大変嬉しく思っております」。

また、審査員の森永邦彦(ANREALAGE)は次のように評価する。「『波紋』というテーマに対し、多くの人が良いと感じるものや当たり前とされているものだけでなく、自分だけが良いと信じる価値を提案していた点が印象的でした。グランプリを受賞した『ノートの素』は、ノートの原型――石や木に文字を刻んでいた時代を想起させるようなプリミティブなあり方――に立ち返らせてくれる提案でもあります。私が専門とするファッションの業界では、多くの人のためにデザインする量産品と、特定の人のためにつくるオートクチュールは両立し難いものですが、この作品はひとつのものを繰り返し届けながら、両方の性質を併せ持っている点に魅力を感じました」。

同じく審査員の木住野彰悟(6D)は「自分の内側にあるものから発想されている点に強さを感じました。優れたアイデアには共通する思考の型や方程式のようなものがあり、それはほかの領域にも応用できる。この作品にも、そうした広がりの可能性を感じました」とコメントした。

優秀賞「g(グラム)」東出和士

優秀賞「縁で見分けるノート」塚本裕仁

優秀賞には、重量の差異に着目したペンシリーズ「g(グラム)」、縁の配色によって識別性と統一感を両立する「縁で見分けるノート」、罫線を排しグラデーションで時間の流れを表現する「うつろう手帳」の3作品が選ばれた。いずれも既存の文具に潜在する感覚や行為を再定義し、日常の行為に新たな気づきをもたらす提案となっている。

優秀賞「うつろう手帳」五十嵐瑞希 瀧澤樂々

また、受賞者に授与されたトロフィーには、テーマである“波紋”の概念がかたちとして落とし込まれている。一石を投じた瞬間に広がる揺らぎを封じ込めた造形は、個のアイデアが社会へと波及していく様相を象徴するものだ。

コクヨデザインアワード2026のトロフィー。

コクヨデザインアワードの特徴は、単なるアイデアコンペにとどまらず、受賞者と企業が協働しながらプロダクト化へとつなげていく点にある。今回の受賞作もまた、プロダクトとして社会に実装される可能性を内包しており、デザインが実際の生活環境へと波及していく契機となる。

個人の実感から立ち上がる小さな問いが、他者との関係性の中で広がり、新たな価値へと転換されていく。同アワードが提示するのは、そうした“共鳴するデザイン”のあり方であり、プロダクトデザインの領域を越えて、社会との接続点を再考する場でもある。End