第5回
「15年目のルミナリエの灯かりを想う」

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照明といえばLEDというような今日この頃。街のイルミネーションもすっかりLED花盛りです。白や青の煌めきが冬の街を飾ります。CO2削減の期待を一手に担うかのごとく。

昨年暮れ、神戸では冬の風物詩となった「神戸ルミナリエ」が15回目を数えました。15年前、初めてのルミナリエに言葉にも出来ない感動を覚え、全身が熱く震えたのを今でも忘れません。以後は、その感動の大きさと年々商業的になる姿にギャップを感じつつ、私の地元である神戸の再生に一役も二役も買っている現実に複雑な思いで接してきました。

暖かな灯かりは、心に安らぎを与えてくれる気がします。人を素直にすると聞いたこともあります。キャンプファイヤーの炎や蝋燭のともし火に引き込まれるような感覚を覚え、何とも言えない柔らかな感情に包まれ、見つめ続けた経験のある人は少なくないはずです。

昨年、表参道のけや木並木のイルミネーションがLEDにより11年ぶりに復活しました。樹木にもやさしく、環境にも配慮された、今後のイルミネーションのあり方だと思います。ただ、とても煌びやかできれいだけれど、見つめたいとは思いませんでした。そして、暖かい気持ちになれない自分に気づきました……。

神戸ルミナリエがLEDになったら、そこには「阪神・淡路大震災犠牲者への鎮魂」の意味がなくなるような想いになりました。だけど「都市の復興・再生」の象徴にはなるのかもしれません。

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そんな想いのなか、震災記念日が15回目を重ねました。(文/マックスレイ 商品研究所 所長 永井一夫)

この連載コラム「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。