理研がクモ糸の構造を解明
強靭な人工クモ糸作製の設計指針に有用

▲Photo by Nicolas Picard on Unsplash

理化学研究所(理研)環境資源科学研究センターバイオ高分子研究チームの沼田圭司チームリーダーらの共同研究グループは、クモ糸が生息環境の湿度にあるときや獲物となる昆虫の飛来速度に近い速度で延伸するとき、強靭性が向上することを発見した。

▲図1 研究における実験系

今回、共同研究グループは、天然のジョロウグモ(Nephila Clavata)から、命綱の役割をする牽引糸(クモ糸)を採取し、生息環境の湿度とクモ糸の伸長速度が、クモ糸の構造と力学的性質に与える影響を評価した。

▲図2 クモ糸の力学的性質の伸長速度と湿度依存性

その結果、温和な湿度や獲物となる昆虫がクモ糸に捕捉される際に起こりうる伸長速度付近において、クモ糸のエネルギー吸収性(強靭性)が大きくなることを見いだした。

▲図3 クモ糸の湿度と伸長速度依存的な破断挙動の模式図

タンパク質から構成されるクモ糸は軽量で、強度と延伸性に優れているため、従来の石油由来の材料の代替として注目され、人工的に合成する手法が研究されている。しかし、クモ糸の力学的性質を示す仕組みについては構造の観点から未知の部分が多く、人工クモ糸の作製が困難である一因となっていた。

この研究成果は、医療用途や宇宙産業への応用も期待されている人工クモ糸の設計指針として有用だとしている。End