フランス・パリ郊外に、旧ソ連の宇宙⾶⾏⼠ ユーリ・ガガーリンの名前を冠した「団地」があった。そのガガーリン団地（cité Gagarine）を舞台にした映画「ガガーリン」が、2022年2月25日（金）より公開される。

パリ南東のイヴリー・シュル・セーヌにあり、⽼朽化していたこの団地は、2024年のパリ・オリンピックを見据えた再開発により2019年に取り壊されたという。物語の主人公はここで育った16歳の少年ユーリ。恋⼼を抱くロマの少⼥ディアナや親友フサームととともに、不器⽤ながらも少しずつ成⻑していく。しかしそんなある⽇、⾏政当局の調査により、団地の解体が正式に決定してしまう。

次々と住⺠が⽴ち退き、⺟親にも⾒捨てられたユーリは、深い悲しみの中で、空っぽになった無⼈の団地を「宇宙船」に改造し、⾃分の⼤切な思い出がつまったこの場所を守り抜くことを決意する…。

労働者向けの団地として1963年にオープンした当初は、快適な設備が整ったモダンな赤レンガの建築だった。しかし、1980年代に入ると、建物は傷み始め、犯罪も増加するなど、「負のスパイラル」に陥る。

そして、2000年代には再開発が計画された。今回のプロジェクトでは現在の400戸から1400戸に拡大し、2ヘクタールの都市型農地も設置。その一方で、「責任ある解体」にも着手し、3万トンにものぼるレンガ・コンクリートの90％を再利用、まだ使用可能な暖房器具やポストなどは販売することにしている。

監督を務めたファニー・リアタールとジェレミー・トルイユは、「私たちは、⾵刺的に描写されがちな場所や世代をポジティブに描きたかった。ガガーリン団地が⼤好きなユーリにとってこの場所は、時代遅れのユートピアではなく、いまの⾃分を象徴する場所であり、未来の⾃分を育ててくれる場所でもある」と語る。

2030年に完成予定の新団地には、旧ガガーリン住⼈や地域住⺠は優先的に居住できるそうで、この地から新たな共⽣が生まれることだろう。

▲当時解体工事中のガガーリン団地