EXPOパビリオンだけではない、2025年、大阪夏の台湾

「台湾映画の輝かしい今昔」は、重要文化財の大阪市中央公会堂大ホールに人を集めた。上映されているのは、「ハヨン一家〜タイヤル族のスピリット」。©We TAIWAN

今年の大阪は確かに暑い。「大阪・関西万博(Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan)」の開催地。Expoの名の通り、160カ国のアピールしたいものが灼熱の太陽の下にさらされているのだ。熱量が集中している。とりわけ国名が使えず、TECH WORLD という名の民間パビリオン参加となってしまった台湾は、パビリオン内だけでなく、大阪のさまざまな場所で多種多様なイベントを精力的に実施した。そこは大阪の魅力を再認識させられる場所でもある。開催されたイベントの一部をレポートする。

大阪市中央公会堂

大阪市中央公会堂では、大きな繰り人形アイラも演技した。未来からきた小学生という設定だが、小学生にしては個性的な顔をしている。© We TAIWAN

中之島公園に浮かぶ緑のバルーンは、We TAIWAN のキャラクター「アウィー」。手前は夏バテ気味で休んでいるアウィー。その大きさがわかる。

台湾文化部が主催する複合型イベント「We TAIWAN」 のなかでも高い関心を集めていたひとつが、「台湾映画の輝かしい今昔」。最前線といにしえの台湾の映画が、1918年竣工で重要文化財の大阪市中央公会堂で無料公開された。

TFAI (国家映画・視聴文化センター)がセレクトした10本の映画は、ドラマ、ドキュメンタリー、コメディーと、また制作年もバラエティーに富んでいるが、どれもなかなか観る機会がない質の高いもの。1960年代の台北の街が描かれた作品や「史上最もふざけた台湾映画」と評された動物の着ぐるみが大乱闘を繰り広げる作品、アン・リー監督の「恋人たちの食卓」など台湾の多様性を感じさせる映像が大きなスクリーンに展開した。

こども本の森 中之島

いきなり台北の夜市に変わったかのような、「TAIWAN PLUS 台日新風」開催中の、中之島公園の宵。© We TAIWAN

大阪市中央公会堂と同じく、中之島公園内にある安藤忠雄設計の「こども本の森 中之島」では、教科書を含むこどもの本・絵本を集めて展示。

本の展示と聞くと一見地味に思えるが、これが思っているよりもインパクトが強い。実物を手にとり自分のペースでめくることができ、また幼児にもわかるように表現されているので、絵本は文字が読めなくてもダイレクトに伝わるメディアなのだ。しかも絵がおもしろいだけでなく、台湾の文化を表現したものをセレクトしているので、大人が見ても十分引き込まれる内容で、何冊も手に取ってしまう。

© We TAIWAN

台湾絵本がーいーらー! 原住民、民話、生活、宗教、人文、自然美という6つのテーマにそって選ばれた絵本。

グラングリーン大阪「VS.(ヴイエス)」

© We TAIWAN

梅田のグラングリーン大阪内にある文化施設「VS.(ヴイエス)」では、台湾に古くから伝わる伝統の染色、絵画、舞踏などが披露された。とくに評判が高かったのが VIP を招待しておこなわれた「原住民の夜」。台湾屏東県瑪家郷の娜麓湾楽舞劇団の公演をはじめ、台湾だけでなくニュージーランドのマオリや、日本のアイヌなども顔を合わせた。

娜麓湾楽舞劇団は、パイワン族が集いの場で歌う伝統歌を披露した。© We TAIWAN

ニュージーランドのカフランギ・マオリ舞踊団(Kahurangi Māori Dance Theatre)による迫力のあるハッカ(戦士の舞)。© We TAIWAN

VS.ではこのようなテンポラリーなイベントだけでなく、絵画をもとにしたグラフィックプロジェクションや、台湾特有の植物によって染めあげられた色を見せる展示、山林の鳥の鳴き声、波の音、縁日の喧騒などをコラージュしたサウンドシアターなど常設の展示も行われていた。


© We TAIWAN

フューチャーライフヴィレッジ

万博会場内には、大型のパビリオンだけでなく実は大小さまざまな施設が点在している。古くから伝わる伝統文化だけではなく、台湾政府が推し進める技術革新の最先端をアピールするイベントは、こうした施設のひとつで行われた。西ゲートより西にあるフューチャーライフヴィレレッジTeam EXPOは、若手建築家・小室 舞が設計した収容人数50人ほどの半屋外空間。

台湾新経済連盟(NEAT)主催の「Cool Taiwan & Osaka EXPO Summit 2025 」という記者会見とトークイベントはここで。最高気温34度のなか、少々不安な気持ちもあったが、ときおり吹く海風と大型扇風機の風に助けられ、テーマや登壇者が入れ替わり、オーディエンスも出たり入ったり自由にできる、開放感あふれるリラックスした雰囲気のトークイベントとなった。

内容はNEAT と日本の一般社団法人元宇宙推進協議会が、半導体、人工知能(AI)、次世代通信分野で日台の協力を強化していこうとするもので、大阪観光局だけでなく、福井県や静岡県といった、将来次世代技術の産業に大きな関心を寄せる地方自治体の担当者も参加していた。元宇宙推進協議会とNEATによる「友好協力宣言」の署名で、記者発表は締め括られた。

Cool Taiwan & Osakaと銘打っているが、クールというより熱い人たちばかりが集まった記者会見場。

賛否両論かまびすしいなか始まった大阪・関西万博も残すところわずか。といっても、まだ一月半ある。We TAIWANの活動もまだ終わらず、8月26日(火)から28日(木)には万博内のポップアップステージ北で、民間伝統芸能人形劇や舞踊、合唱などの「廟前の感謝の舞台」を見ることもできる。 あとから振り返れば、大阪夏の陣と同じ、歴史的な時代の転換期になるのかもしれない。この機会にもう一度大阪に行き、熱くなってみてはどうだろう? (文/AXIS 辻村亮子) End