未来のデザインを拓く「グッドデザイン・ニューホープ賞」
体験価値と発見を促す若きクリエイティブの現在

公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「グッドデザイン・ニューホープ賞(GOOD DESIGN NEW HOPE AWARD)」は2025年12月20日(土)に2025年度最優秀賞を発表した。応募総数668件の中から115件が受賞し、優秀賞として最終プレゼンテーション審査へ進んだのは8件。最終審査の結果、仕組みのデザイン「天体音測会」が最優秀賞に選出された。

今年で4回目を迎える同賞は、専修専門学校・大学・大学院に在籍、または卒業・修了後間もない若手のデザイナーや研究者による作品・プロジェクト・研究を対象に、次世代の創造力を発掘し支援するアワードである。

静かなる宇宙体験を都市へ

最優秀賞に選ばれた「天体音測会」は、都市部で光害により見えなくなった星空を“音”として聴く仕組みのデザイン。可聴化の技術と認知・感性の設計を掛け合わせ、参加者自らが能動的に“星の音”を探す体験を通じて、宇宙への意識を変えるプロセスを提示している。審査委員からは、見えないものに光を当てるアイデアのユニークさと、プロダクトの持つ可能性が高く評価された。

作品名:天体音測会
受賞者:佐野 風史(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科政策・メディア専攻 M1)、藤本 未来(東京科学大学大学院 環境・社会理工学院 融合理工学系)

「まだ見えない可能性」を評価する場

ニューホープ賞は、デザインが社会に実装されていることを評価する従来のグッドデザイン賞とは明確に異なり、社会実装前の段階だからこそ生まれる自由で開放された発想を評価する。審査委員長の齋藤精一は、今回の受賞作品群について「デザインは慣例や常識にとらわれすぎる必要はなく、若い才能が自由な視点で問いを立てることが重要だ」と同賞の意義を述べた。

審査委員長の齋藤精一(クリエイティブディレクター/パノラマティクス主宰)。

多様なカテゴリーが描く創造の地平

受賞作品は「物のデザイン」「場のデザイン」「情報のデザイン」「仕組みのデザイン」の4カテゴリーにわたり、製品設計から環境提案、情報・体験設計まで幅広い領域をカバー。たとえば、人工内耳装用児向けの楽器玩具や持続可能な狩猟支援プロダクト、離島の移住構想、感情を可視化する体験デザインなど、多様な視点から社会課題や体験価値を問い直す取り組みが並ぶ。これらはいずれも、日常の境界を拡張し、未来の生活文化を豊かにする可能性を持つものだ。

最優秀賞受賞の佐野は「目に見えにくいものにフォーカスしたテーマを評価していただいた審査委員の皆さんに感謝しています」と述べた。

受賞の先へ──支援プログラムの展開

今回も受賞者には、ワークショップや企業見学会といった特典プログラムが提供され、継続的なキャリア支援が行われる予定だ。デザインの“はじめの一歩”に光を当て、若手クリエイターの創造が社会や産業へとつながっていくプロセスを、ニューホープ賞はこれからも見守っていく。End

2025年度 グッドデザイン・ニューホープ賞 優秀賞

作品名:TATACO
受賞者:趙 晨光(武蔵野美術大学大学院 造形研究科工芸工業デザインコース 既卒)、王 澤(武蔵野美術大学 造形学部油絵学科 B4)

作品名:DBT
受賞者:上田 俊一(長岡造形大学大学院 造形研究科 M1)

作品名:移住者の家_2025 -ゲニウスロキを捕まえる12年の営み-
受賞者:末松 拓海(芝浦工業大学建築学部建築学科 B4)

作品名:呼吸する海のキャンパス 
受賞者:矢野 泉和(九州大学大学院 人間環境学府空間システム専攻)

作品名:見えないものを愛でる 
受賞者:五井 美琴(東北芸術工科大学 デザイン工学部プロダクトデザイン学科 既卒)

作品名:EDOODLE – 子どもの「外れ値行為」を生かした落書きから広がる教育アプリケーション - 
受賞者:亀田 あかり(金沢美術工芸大学 美術工芸学部デザイン科製品デザイン専攻 既卒)

作品名:子どもがキャッシュレス感覚を身につけるお財布デバイス「pach!t」 
受賞者:菅沼 光(多摩美術大学 美術学部生産デザイン学科プロダクトデザイン専攻 B4)