特集
腕にまく未来。
人の心を動かす時計とは何か?
それはおそらく、時を刻む道具という一義的な役割を超えて、人間が生み出したさまざまな知恵や技術が高度に統合されたデザインに他なりません。優美なフォルムや工芸品の域を思わせる繊細な装飾加工、複雑緻密なメカニズムなど、直径わずか40mm程度のケースのなかにちりばめられた創意工夫の数々は、人の手と知能がつくり得るプロダクトの最高峰といっても過言ではないでしょう。
技術革新への飽くなき追求がデザインと表裏一体となり、多彩な個性やブランドの誕生につながってきたことも見逃せません。駆動装置がデジタル機構に置き換わり、さまざまなセンサーが盛り込まれた腕時計型のウェアラブル端末では、日々の健康サポートといったユーザー体験の拡張とそのインタラクションが新たなデザイン領域として注目を集めています。
時間と無関係でいられない私たちにとって、そんな腕時計は今もこれからも、時に身体の一部として、時に感性を刺激するデザインプロダクトとして存続し続けます。今号では、デザインや社会課題と向き合うビジネスモデル、デジタル技術を駆使した新たな体験の創造など、腕時計から見える「未来」について考えます。
Vol.208 | 2020年10月30日 発売 |
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定価: | 1,800円 |
表紙: | 表紙写真 久家靖秀 |
018
Wristwatch Overview
026
過去と現在、未来が交錯する腕時計のデザイン
腕時計が誕生したのは20世紀初頭。そこから現在に至るまで、時計には建築・デザインの潮流が「とき」を超えて脈々と流れている。直径わずか数十mmの文字盤という舞台の上には多種多様なデザインが展開されている。
030
プロダクトデザインから読み解く、セイコー、シチズン、カシオのリアル
高い技術力で世界を席巻してきた日本のウォッチブランドは今、何を形にし、何を表現しようとしているのか。そして、腕時計の価値やブランドの形成において、プロダクトデザインはどんな役割を担っているか。3社のインハウスデザイン部門を統括する3名に聞いた。
036
憧憬を生むものづくり
独立時計師によるハイエンドの腕時計
腕時計は必要か否か。単に時を告げるものとしてならば、もはや必携でないと言わざるを得ないが、人とともにある嗜好品としての時計は、これからも変わらずに求められるに違いない。そう確信させるのが、独立時計師という存在である。目の肥えたマニアが、この人のつくる時計が欲しいと、何年も待ち焦がれて、高価な逸品を手に入れる。最高峰のものづくりとはどのようなものか、ふたりの独立時計師のアトリエを訪ねた。
042
秋田から、世界一小さなマニュファクチュールへ―ミナセが描く、100年先の未来
工具メーカーからケースメーカー、他社ブランドのOEMと時代の変化とともに時計づくりのノウハウを40年以上にわたり蓄積してきた協和精工が、満を持して2005年に発表したブランドが「ミナセ」である。分業が一般的な時計業界において自社一貫生産を追求する同社が目指すのは、“ 世界一小さなマニュファクチュール” だ。
046
腕時計ビジネスにおける新セグメントの創造―ノット
時計本体とベルトのカスタマイゼーションを目指し、SPA(製造小売)モデルを実現。2014年、東京・吉祥寺から生まれたリストウェアブランドであるノットは、日本の腕時計業界に新風を巻き起こした。徹底的に「メイド・イン・ジャパン」を追求してきた代表の遠藤弘満に、次なるイノベーションについて話を聞いた。
050
私と時計
ひがしちか、中山英之、川崎力宏、鶴岡真弓
054
ISSEY MIYAKE WATCHの20年
デザインを支えるセイコーウオッチの開発力
三宅デザイン事務所とセイコーウオッチによるプロジェクト「ISSEY MIYAKE WATCH」は2021年に20周年を迎える。10余名ものデザイナーが生み出した腕時計は、およそ20種類。開発には卓越した技術力が欠かせない。その舞台裏を探る。
058
新生海外ブランド
世界各地で生まれている新しい時の流れ
―スターングラス、クレシャ、ノマド
ミレニアル世代を中心とした若者から、ステータスシンボルや宝飾性、機能の革新性を求めない新しい腕時計が生まれ始めている。彼らが腕時計に求めているのは、デザインを重視した日常づかいができる自分たちの身の丈にあった機能的な表現だ。
064
社会課題に挑む新興腕時計メーカー
コストパフォーマンスから、社会問題への向き合い方へ。コロナ禍によって、ブランドやメーカーに対する消費者の意識はこのように変化していくという予測がある。貧困や差別、環境汚染といった世界が抱える課題に、どうコミットするのか。歴史ある時計メーカーが明確な回答を示せないなか、真正面からその問いに答えようとしているウォッチブランドがある。
068
デザインにもっとロマンを
和田 智、井上英樹、鈴木 元が語る時計デザインの世界
プロダクトデザイナーにとって、一度は手がけてみたいアイテム、それが腕時計だ。クルマだけでなく時計のデザインに向きあった経験を持つ和田 智、時計との格闘を日々続けるシチズンの井上英樹、そして時計のあり方に関心を寄せるプロダクトデザイナーの鈴木 元の鼎談を通して、時計のこれからを考える。
074
「テクノロジーが新たなラグジュアリー」な時代の、その先へ
アップルウォッチが世界で最も売れている腕時計へと成長した今、特にスマートウォッチのデザインは、それに追随する流れが目立つようになってきた。一方で、伝統的なアナログ/デジタルの腕時計の世界では、メカニズムの複雑性や外装・ウォッチフェイス(文字盤)の装飾性に価値を持たせて差別化を図る、従来からの動きが続いている。今、デザイナーに求められるのは、そこにとどまらない「発想のジャンプ」だ。
006
Close-Up
国立工芸館
081
LEADERS
土井善晴(料理研究家)
086
Sci Tech File
ミツバチの世界から学ぶ
多様性を活かした社会づくり
092
Insight
丸山 新が構想するグローバルデザインプラットフォーム「Form」
098
Insight
大理石のファンタジー
ヴァレクストラ、マーヴルズ・プロジェクト
104
Insight
富山で高まるデザインへの期待「とやまD’DAYS」
109
クリエイターズナビ
ナダ・デビス、黒田勝雄、唐津絵理、江崎 賢、井上 成
114
田川欣哉のBTCトークジャム
ゲスト:土屋尚史(グッドパッチ代表取締役社長/ CEO)
120
& DESIGN
太田睦子(アート)、長谷川敦士(ビジネス)、大根田 杏(ファッション)、君島佐和子(フード)、土田貴宏(インテリア)
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