フィリップス社が始めた途上国ビジネス
「世界を変えるデザイン展カンファレンス」より

5月14日から東京ミッドタウン・デザインハブで始まった「世界を変えるデザイン展」のカンファレンスに参加してきました。オランダのフィリップス のサスティナビリティ・ディレクター、フランク・オルタナ氏よるフィリップスが取り組んでいるBOP(Base of the Pyramid)ビジネスのお話。

アフリカを中心に、フィリップスのインハウスデザイナーと現地に赴き、その土地のニーズを反映した照明プロダクトなどを現地の人々とともに開発しようとしています。灯油を使わない照明の供給、つまりソーラーパワーを軸とした商品群で、LED光源を使用したものもいくつか紹介されていましたが、それらが普及していくことで将来、途上国の生活環境がどれだけ改善されていくのか、聴講している私たちにも考えさせられる内容でした。

オルタナ氏は夜でも子どもたちが勉強できるソーラーLEDライトなどの実物を紹介してくれましたが、今後の課題として、そうした商品への購買力を向上させていくことと(市場の開発)、実際に手にしたときの正しい使い方を伝えていくこと(教育)が大事とのこと。

このソーラーLEDライトなど、現地の人々は最初に手にしたときどうしても紐を付けて吊るそうとするのだそう。でもそれは「光」を求める気持ちが強いが故のアクションだと感じました。現在、世界中で16億人が電気の供給を受けておらず、年間77億リットルの灯油と再利用できないバッテリーを使っているという現状を、私たちは目を逸らせずに受け止めなければいけません。オルタナ氏はそれらの現状を踏まえたうえで向き合わなければいけないことをいくつか話していました。特に現地の人々との商品開発、検証、そしてでき上がった商品の流通など、すべてにわたってコミュニケーションの大切だと。

フィリップスではBOPビジネスは始まったばかりで、利益は少ない。LEDの開発でも同じですが、新しいことに挑戦していくには時間もかかるし、企業の持続可能な能力も問われることだと思います。
フィリップスのようなグローバル企業だけができることなのか、あるいは私たち個人でも考えはじめられることはあるのか、冒頭で流れた動画を見て、「光」の重要さを感じながら、いろいろな思いが沸いてくるのでした。(文/マックスレイ 谷田宏江)

この連載コラム「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。