ベルリンのデザインユニット「オスコ+ダイヒマン」に見る
現代のバウハウス

前回紹介したギャラリー「ヘルムリンダークネヒト」で、この6月までベルリンのデュオ「オスコ+ダイヒマン」の初の個展「機能的な損傷ーースチールパイプ家具のファミリーにおける故意のねじれ、凹み、曲げの美」が開かれています。

ブラジウス・オスコ(Blasius Osko)とオリヴァー・ダイヒマン(Oliver Deichmann)はふたりとも1975年生まれ。ベルリン芸術大でフォークト&ヴァイツェンエッガーの後輩にあたり、彼らの弟分のように徹底してコンセプチャルなデザインアプローチを続けています。最初の頃は「願望研究家」と名乗っていて、ドイツで寿司がブームになりかけた頃、素人でもこの道具さえあれば誰でも巻き寿司ができるという「スシ・ローラー」を開発したこともありました。

今回発表されたのはスチールパイプを折り曲げたり、ねじり曲げたりする工程で、本来なら欠陥・破損とされる痕を応用した独特なデザイン。ドイツ語で折り目のことを「クニック」と言うので、クニックデザインと呼んでもいいかもしれません。プラスチックのストローを指で簡単に折り曲げるかのようにハードな金属がふにゃっと折り曲げられています。このデフォルメするという行為が新しい機能美をクリエイトする結果につながりました。

昨年のバウハウス90周年記念の「ハッピーバースデイ・バウハウス」展で、カンチレバーチェアへのオマージュとして開発した椅子がすべてのはじまり。クロムメッキ加工していないステンレスに松材の厚板という”ごっついマテリアル”の組み合わせで、ダイニングテーブル、デスク、チェア、書棚、サイドボード、フロアランプなどを限定生産。カンチレバーチェアは新開発の”ダブルクニック”によって、スタッキングもできるようになりました。(文/小町英恵)

この連載コラム「クリエイティブ・ドイチュラント」では、ハノーファー在住の文化ジャーナリスト&フォトグラファー、小町英恵さんに分野を限らずデザイン、建築、工芸、アートなど、さまざまな話題を提供いただきます。