AXIS 148号 11月1日発売です。

表紙インタビュー:水戸岡鋭治(工業デザイナー、イラストレーター)
ジャケットの襟に付けられたミッキーマウスのピンバッチが印象的だ。聞けば、「私のデザインの理想はディズニーなんです」という答えが返ってきた。JR九州の車両デザインを筆頭に、数多くの公共デザインに取り組み、豊かな環境や世代を超えた文化の交流を築き上げてきた。車両デザインのフロントランナーとも言われる氏が見据えるのは、老若男女を問わず、常に笑顔と笑い声が絶えないデザインだ。

特集:公共交通移動空間の近未来
エネルギー事情の大きな変化とともに、重要度を増しつつある公共交通機関。その役割が大きくなるにつれ、利用者も多様になり、求められる要素も従来とは違ってくるはず。ここでは、鉄道をはじめ、飛行機、トラム、バスなどの最新事例とともに、公共交通移動空間のこれからを探っていく。

奥山清行インタビュー/プリーストマングード「マーキュリー」/日立製作所「A-train」と「車上情報システム」/近未来を予感させるデザイナーたちの提案/ニュージーランド航空とIDEO「機内改造計画」/水戸岡鋭治「両備バス」ほか

匠のかたち:マンホールと鍋
昔ながらのキューポラ(熔解炉)が今も活躍する、川口市の鋳物工場を訪ねた。1,500℃の熱で溶融し流動状となった鉄は、湯と呼ばれる。マグマのように赤い湯は、遠くから眺めているだけでも息苦しくなるほど熱い。おいそれと近寄れない迫力だが、職人は火の粉が降る中をひるむことなく、手早く湯を扱い、運び、型に流していく。ここではマンホールから鍋まで、多種多様な製品がつくられている。一見共通点のないマンホールと鍋。しかしそれらは、薄く丈夫な鋳物を追求した結果、生まれたものであった。

オピニオン:葉田順治(エレコム代表取締役社長)
昨今の経済状況をものともせず、成長を続けている大手PC周辺機器メーカー、エレコム。同社躍進の要因の1つに積極的なデザイン展開があるのは広く知られるところだが、それを主導してきたのが、代表取締役社長の葉田順治氏。自らを“デザインおたく”と呼び、「コンピュータのことは何もわからないけれど、デザインについてはわかる」と冗談まじりに話す同氏。そのデザイン観とは?

トピックス:アルプスの山村から新しい発展への指針—イタリア・トリノ工科大学建築科建築技術専攻による山村の知恵の研究
2010年7月10日にトリノの南西約115kmにあるアイゾーネという町において、ストゥーラ渓谷山村共同体の主催による「石造りのように柔軟に」展が催された。これは01年に始まった調査研究の成果発表であり、環境と密接につながった生活技術の知性を明らかにしたものである。

トピックス:サスティナブルとエシカルとエレガンス—「アース・アワード」に学ぶデザイナーの貢献
9月16日、「第2回アース・アワード」の授賞式が、ロンドンのマルボローハウスで開かれた。今年のエントリー数は約600に及び、建築、プロダクト、ファッションなど6つのカテゴリーのなかから大賞が選ばれた。審査員には建築家のキャメロン・シンクレアやMoMAキュレーターであるパオラ・アントネッリなどが名を連ねた同アワードだが、消費者の立場から環境を含む社会問題を考察する点で他のアワードとは一線を画したものとなっている。

その他トピックス:
香港ビジネス・オブ・デザイン・ウィーク 2010
南アフリカ・ヨハネスブルグの公共交通事情
ディディエ・フィウザ・フォスティノへの問いかけ
第5回 金の卵 学生選抜 オールスター デザイン ショーケース

その他連載:
ザ・プロトタイプ「セイコーエプソン スマートキャンバス」
まばたきの記憶「けん玉とりんご」
ジェームズ・ダイソンの法則「子供のころの思い出」
モラルの土木「大きな都会の小さなモヤッ」
本づくし・書評 深澤直人/暦本純一/佐藤敏明/阿部雅世
産学共同の正しいやり方「東洋大学と本田技術研究所」 ほか