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コロナ・ブックス編集部 編『作家の家』


作家の家 (コロナ・ブックス)
コロナ・ブックス編集部 編(平凡社 1,680円)

小説家、アーティスト、写真家、建築家など15名の住まいを紹介。写真を中心に、その家で暮らした親族らのインタビューやエッセイを掲載することで、家に対する考え方をより魅力的に伝えている。

清家 清さんの「私の家」は、わずか50平米のワンルームだったという。もとは両親の隠居部屋として清家さんが設計したものだったが、「こんなへんてこな家には住めない」と祖父に言われ、結局、清家さんの家族で住むことになったと、長女の八木ゆりさんが語っている。

1つの部屋が、居間になったり、仕事部屋や客間になったり……。図面を広げる父親のかたわらで娘と友達が梁にぶら下がって遊び、夜に仕事の打ち合わせがあれば、子供たちは両親のベッドに潜り込んだ。そんなエピソードの数々に住まいへの考えが端的に表れているようで興味深い。

清家さんの言葉も『別冊新建築 清家清』(1951)からの抜粋で紹介されている。

「構造は鉄筋コンクリート造り、広さは2間×5間、床は鉄平石張り。靴のまま生活する、戸棚、押入の類が少ないのはこの家を建てる資金に持物をみんな売ってしまうからだが、又このような着たきりの生活も悪くないとおもう。
 天井高は方丈記の通り内法7尺、要するに、Simple life and high thinkingである。子供が生れたらハンモックを天井から釣ってねかせる。まして国民の大半が、住宅もなくて生活していることを忘れてはならない。宮殿・楼閣も望みなし。『今さびしきすまい、ひとまのいほり、みずからこれを愛す』と方丈記の作者はいう。幸福とはこういう類であろう。」

ほかに収録されているのは下記の方々。どの住まいも暮らし方も個性的だ。
吉田健一
山口 瞳
澁澤龍彦
立原道造
植田正治
井上 靖
有元利夫
高田喜佐
熊田千佳慕
石井桃子
種村季弘
岡部伊都子
釘宮對宕
長沢 節

巻末に、建築家・鈴木基紀の実測図面集も収録。
ソフトカバー、B5変型判、148ページ。