AXIS 150号 3月1日発売です!

カバーインタビュー:葛西 薫(アートディレクター)
文字への興味を始点とする創作活動は40年以上に及ぶが、そのデザイン表現は、淀みのない川の流れのように、清新な印象を保ち続け続けている。「伸びやかで、心地良い空気が漂っている」などと形容される世界観は、もとより奇をてらったものではなく、このクリエイターが備えた知性と品格によってのみ更新されるデザインの1つの規範といっても決して大げさではない。そして作品同様、本人も実に魅力的だ。

特集:アジアのデザイナーたちは世界を目指す
ここで紹介するのは世界を相手に活躍するアジアのデザイナーたち。今や中国、韓国、台湾、タイ、シンガポールなど、日本以外のアジアの国々から、数多くの多様な才能が世界に飛び出している。そんな彼らを突き動かすものとは何か? また、“内向き”といわれる日本人だが、はたしてデザイナーやデザインを学ぶ学生も内向きなのだろうか? 世界を目指すアジアのデザイナーたちを前に、そんな問いかけをしてみたい。

匠のかたち:ランドセル
ランドセルは日本で生まれた鞄である。その原型は、幕末の頃、西洋から軍隊制度とともに伝えられた布製の「背嚢(はいのう)」であった。学校の鞄となったのは、明治18年、学習院が馬車や人力車での通学を禁止し、軍用の背嚢に学用品を入れて通学させたのが始まり。オランダ語で背嚢をランセルと言うことから、ランドセルと呼ばれるようになった。小学生の鞄として全国に普及したのは、昭和30年代以降。近年は、人工皮革を用いた軽いランドセルが市場の主流となっているが、昔ながらの手縫いに支えられた革製ランドセルは、丈夫で型くずれしない。その秘訣は、質の良い素材と丁寧な工程にあった。

トピックス:ドイツ・アルプスの片田舎から世界へーーニルス・ホルガー・モーマンの哲学
低価格、前面に押し出した有名デザイナーの名前、ネットや多店舗展開による購入のしやすさ……。今、売れる商品の要素がこれらだとしたら、それらと正反対にも関わらず着実に実績を上げている家具メーカーがある。20年以上前からエコロジカルでサスティナブルな経営を実践してきたニルス・ホルガー・モーマン社をドイツ・アルプスに訪ねた。

トピックス:ヘルシンキ都市開発計画2030年 “私たちの都市”という名の未来都市へ
2000年以降、欧州では持続可能性の追求やインフラ整備が市民生活に関わる重要なテーマとして都市計画の際に積極的に検討、採用されるようになった。2006年頃からは中国やインドでも同様のテーマを掲げた計画が発表されている。しかし、世界各地で進行中の計画は、標榜するものは似通っていても背景にある政策や事情はさまざまで、なかでもフィンランドの首都ヘルシンキ市が10年毎に策定する都市開発の基本計画には、近年の世界情勢とは一線を画す独自の姿勢、思想が貫かれている観がある。2030年、ヘルシンキはどのような都市になろうとしているのだろう。

トピックス:写実的なオブジェとテキストで魅了するーーオンカー・クラーとノアム・トランによる「価値観にこだわって
難解な内容を平易に表現する目的でビジュアルを多用し、作品解説のテキストをできるだけ少なくした展覧会が増えている。しかし、これが文字離れや読解力の低下に拍車をかけるだけでなく、文章から想像する豊かな世界を奪っているのだとしたら。そう考えるデザイナーのオンカー・クラーとノアム・トランは、オブジェとテキストを組み合わせたユニークな展示手法によって人々を魅了し、新たな観客を得ている。

その他トピックス:
香港ビジネス・オブ・デザイン・ウィーク2010
サンテティエンヌ・デザイン・ビエンナーレ
21_21 DESIGN SIGHT 「倉俣史朗とエットレ・ソットサス」展
「ヴァルス・オトマティック」 ライブミュージックからフォルムが生まれていく
南アフリカ・ダーバン「デューベ・トレードポート」プロジェクト

その他連載:
ザ・プロトタイプ ニコン「バース・オブ・ザ・ビジョン」
まばたきの記憶 「ひらめきのパラパラマンガ」
オピニオン 高木美香(経済産業省 クール・ジャパン室 室長補佐)
モラルの土木 「メランコリック自転車道」 ほか