vol.12
「db0(ディービー・ゼロ)」

自転車用の電動アシスト技術は日本で最初に実用化されたが、もはやわが国だけの専売特許ではなくなっている。また、ペダル軸にアシストモーターを取り付けるのではなく、交換の容易な前輪をホイールインモーター化し、キットとして販売できるような製品も登場してきた(日本では、型式認定の関係で完成車として販売することが義務づけられているため、キットとしては売られていない)。

「db0」(ディービー・ゼロ、189,000円)は、こうしたホイールインモーターを備えた電動アシスト自転車で、アメリカのROBRADY Designがデザインし、台湾の東庚企業股分有限公司(「分」はにんべんに「分」)が製造。日本では、岐阜のユニオートが販売を手がけるが、もともと自動車の輸入販売を手がけていた同社が扱いを決めた点にも時流が感じられる。

ショートホイールベースで高めの全高は、既存の自転車にはあまり見られない新しいプロポーションであり、これはバッテリーの格納方法とも関係していそうだ。というのは、車体のほぼ中央に円筒形のバッテリースペースがあり、これを軸にしてフレームが折り畳めるようになっているのである。バッテリーサイズと、強度の確保の観点から、この部分の縦方向の高さが決まり、それに合わせて全体のフォルムが決定されていったものと思われる。

前後共に片持ちフォークを持つフレームは、かなり頑丈で、自転車とオートバイの中間的なつくりとも言える。重量も24.5kgあるため、折り畳みも輪行などのためでなく、玄関などに置く際の省スペース性や、自動車などに積んで移動先で乗るような用途を想定したものだろう。

つや消しブラックにグリーンのアクセントを配したカラーリングも斬新で、個人的には、日本の電動アシスト自転車にも、このくらい思い切った発想のデザインを求めたいものだ。(文/大谷和利)




大谷和利/テクノロジーライター、東京・原宿にあるセレクトショップ「AssistOn」のアドバイザーであり、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真に関する執筆のほか、商品企画のコンサルティングも行う。近著は『iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』『43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意』(以上、アスキー新書)、『Macintosh名機図鑑』『iPhoneカメラ200%活用術』(以上、エイ出版社)、『iPhoneカメラライフ』(BNN新社)など。