コンセプトを深く理解して形にする
小林幹也「Be」

「変わらない想いを受け継ぐ形」

小林幹也氏のデザインによる「Be」の原案は、2列10段で引き出しが20個もあるSHELFでした。「予算から考えて、2段くらいしかできない!」という声もあったのですが、私たちは原案を完全に再現しようと意気込みました。

しかし、コストは全く合わず、予算内におさめるために奔走するなかで、いつしかデザインコンセプトを見失い、製品の大きさを縮めることしか考えられなくなりました。何枚図面を書き直しても、小林氏へのコスト改善提案は平行線、協力会社との価格交渉も難航。

小林氏と協力会社の間で板挟みになっていたとき、「周囲の景色を映し込むことで空間に溶け込み、引き出しのみが浮かび上がる。引き出しを開けるという何気ない行為のなかに埋もれたモノと人との距離感を気づかせる」という本来のコンセプトを再確認しました。そこで、引き出しを1列にし、突板の存在感を一面で現す現在の形が生まれました。

コンセプトを再確認したことで、大きさをただ縮めるのではなく、より小林氏の想いを受け継いだ形になったのです。私たちは作品に与えたい大切なものを迷うことなく職人さんに伝え、職人さんは最高の仕事で応えてくれて、「Be」を完成させることができました。

今回のプロジェクトを通して、良い結果を出すには、製品に対する深い理解と、ともに行動する人々との十分な理解が不可欠だと学びました。(文/杉山一樹、文化空間事業部 開発統括部 営業)

「Be」
デザイン:小林幹也(MIKIYA KOBAYASHI DESIGN)
協力会社:(株)相合家具製作所、ハンドファクトリー(有)ほか
撮影:kenpo

展示や内装の設計・施工を手がける丹青社が、2009 年から新入社員教育の一環として行っている「SHELF制作研修」。本連載では、研修に参加された丹青社の方々に、それぞれの作品について語っていただきます。また、この研修成果については、20119月27日(火)〜10月5日(水)までアクシスギャラリーで開催された「人づくりプロジェクト SHELF展」において、展示報告されました。