「震災」「放射能」に対して今私たちができること
産業廃棄物業者の目線で考える【後編】

前編はこちら。前提が崩れたためにモノが動かない……。がれき以外にもたくさんあります。

震災廃棄物と輸出ストップ!!
被災地の物流センターから、たくさんの震災廃棄物が入ってきました。旬などと言える楽しい話ではありません。群馬のナカダイの倉庫に、東北地方の砂まみれの容器とパレットが並び、海水に濡れてぐちょぐちょになった商品がたくさん運ばれてきました。箱から取り出して中古品として売ったモノ、使い物にならないモノ、いろいろでした。無駄にしないようリユース、最低でもリサイクルをしようと本当に努力しました。ところが……。

鉄や非鉄、プラスチック、紙など、いわゆるリサイクル素材は、アジア、特に中国、韓国、ベトナムに輸出されます。人件費の安さもそうですが、再生品を使って製造した品物は、あまり高価なものではないため、相対的に通貨の弱い国へ流れる傾向があります。

余談ですが、ゴミ同然のモノを輸出して、リサイクル素材と言っているモラルのない人たちが多いのも事実です(第4回参照)。ナカダイでは、上の写真のようなものがリサイクル品として出荷されます。日本国内もありますが、当然、海外向けにも輸出します。

コンテナの積み込みはナカダイで行います。単純に1つずつコンテナに積み込んでいきます。効率的な方法はありません。地道に積み込むだけ。フォークリフトごとコンテナの中に入れる“馬”(上の写真)を使います。もちろん、ナカダイ自作です。そして最後は下の写真のように、「変なモノは乗せてませんよ!」という証拠写真を撮って、鍵をかけて終了です。で、この鍵、青島にあるナカダイの子会社に到着して、初めて開けることになります。

数年来、中国にマテリアルを輸出していて、問題を1度も起こしたことがないにもかかわらず、マテリアルが陸揚げストップされました。理由は放射能の数値。平常時は測定もしなければ、そもそも基準すらない。数値がいくつだったらOKなのか不明です。とにかくダメ!! 今は放射能の数値を測ってから輸出しています。一応基準数値は示されていますが、それに根拠があるかどうかわかりません。

本音と建前、そして、“安全”と“安心”
持ち込まれる廃棄物が激減し、保管していた選別済みマテリアルは放射能汚染と言われ、出荷が思うようにいかない、当然価格は暴落という状況。しかし、ナカダイは廃棄物を受け入れ続けました。そして少しずつ流通し始め、モノが動き始めて一安心の昨年末、今度は海外ではなく国内で問題が顕在化してきました。

ある県が東北の廃棄物の受け入れを拒否しはじめたのです。もちろん公に拒否はしません。いろいろ条件をつけて、資料提出を求め、検査だと言って……。まぁ、とにかくいろいろ言って受け入れないパターン。

ナカダイと取引のある東北の企業や廃棄物業者から相談をもらいました。東北の企業が捨てた廃棄物を東北の廃棄物業者が処理する通常のルートが崩れ、群馬のナカダイに移動。ナカダイ産の廃棄物で出荷する事態になっています。放射能の数値も低く、受け入れ拒否の根拠などそもそもない。役所は百も承知。なぜか? “安全”と“安心”の違いです。同じような話を聞いたことありませんか? 野菜です。米です。食料と一緒です。廃棄の世界、静脈産業は社会を映します。その人の気持ちやその企業の考え方を映すのがナカダイの現場です。

がれきの処理について、2月に入って前橋市からヒアリングが来ました。放射能の数値をチェックした後、受け入れ可能か?と。ナカダイはOKです。分別していないと受け入れないか? 普段は絶対受け入れませんが、今回は受け入れます。たくさんの業者が受け入れれば良いのにと思う人は多いはず。“安全”と言われても、“安心”できない放射能に触れたがれき。役所や業者が良いと言っても、周りの住民が反対したら? 条件を考えたらきりがありません。

ナカダイにできることを、最大限努力して実行する。震災復興のため被災地の人々のためにという大げさな話の前に、困っている地域のために、その地域が望むのであれば最大限に協力をするだけです。

最後に……、復興支援ということで、たくさんの活動する人たちが現地入りしました。そして、活動を報告し、次の活動を始めています。活動から生活へ、日常へ、そして、ビジネスへ。活動そのものが目立たない日が1日でも早く来るように、できることを最大限続けます。(文/中台澄之)

この連載は株式会社ナカダイ前橋支店支店長・中台澄之さんに産業廃棄物に関するさまざまな話題を提供していただきます。