SUPPOSE DESIGN OFFICEの谷尻誠さん設計のレジデンスにて
大事にしたのは「暮らしに寄り添う照明」

今年の5月に引き渡しが完了したレジデンスの照明プランニングを担当しました。設計は、SUPPOSE DESIGN OFFICE の谷尻 誠さん。はじめての施主、はじめての建築設計事務所との仕事はいつも緊張します。しかし、すでに施主と谷尻さんとでは以前から計画・提案が進んでいて、コンセプトや要望が明確で、照明についてはほぼこちらからの提案で進めるスタイルでした。

集合住宅の最上階のフロアで、以前から住んでいる空間のリノベーション。谷尻さんのアイデアあふれる空間のプランニングはこれまで見たことのないようなものでしたが、それは施主との打ち合わせを何度も重ねた結果のデザインです。

最終的には施主夫妻のライフスタイルとセンスが活かされたかたちになりました。そのなかでも、こちらから一番に提案したのは「食事のときの照明」について。美味しいものが大好きなご夫妻は食にもこだわりのある方だったので、蛍光灯、LED、ハロゲンと3種類の光で実際の料理に当てて見てもらいました。採用になったのはハロゲンの光。料理だけではなく、さまざまな器も持っておられ、器と料理のコンビネーションがきれいに見えるのは白熱灯の光の色でした。

奥様の寝室はカーテンがなく、夜は外からの月明かりやほのかな外光からベランダの植栽を通した陰翳が綺麗。朝は朝日の自然光で目覚めるというとても素敵なスタイル。

ベランダの照明の使い方も、植栽たちが浮き上がるような雰囲気に。

今回は、照明プランニングを提案したというよりも、住む側の思いやこだわりを照明という翻訳を通して実現したということかもしれません。ふだんレストランなどの店舗の照明提案がメインである私たちですが、時により人が住む空間からインスパイアされることも。そして、忙しく過ごしている日常であっても、できるかぎり「暮らしを楽しむ」「暮らしに寄り添う」。そんなライフスタイルを大事にしているご夫妻から学ぶことがとても多かったのです。(文/マックスレイ 谷田宏江)

この連載コラム「tomosu」では、照明メーカー、マックスレイのデザイン・企画部門の皆さんに、光や灯りを通して、さまざまな話題を提供いただきます。