「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」レポート


「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」がお台場・青海で開催中だ。

▲ 会場は、ゆりかもめ・青海駅前の特設会場。7つのエキシビションハウスとトークイベントなどを行う施設が点在する

HOUSE VISIONとは、原 研哉氏が発起人となって企業に呼びかけ、さまざまな視点から未来の暮らしや住まいのあり方について対話と研究を重ねてきた活動である。10回の研究会を経て、2011年10月に「東京シンポジウム」を開催。中国でもシンポジウムを実施するなど、アジアを視野に入れた取り組みとなっている。本展はその成果を発展させ、より幅広い層と共有しようという試みである。

▲「1 住の先へ」LIXIL×伊東豊雄
建築によってどのような幸福が実現できるかを考えた伊東氏。土間、蔵、露天風呂のある新しい居住空間を高気密、高断熱の構造・建材によって実現している

HOUSE VISIONの世話人であり、本展のディレクターを務める原 研哉氏は次のように語る。「例えば、再生可能エネルギー、パーソナルモビリティ、高齢者のライフスタイルといったさまざまな技術革新や社会の動きのなかで、日本の工業生産が複合化、環境化していくとそれは“家”になる。つまり家は今後あらゆる“産業の交差点”と捉えることができる。加えて日本の未来資源ともいうべき美意識を家に向かって発露させていくことで、新しい住まいの未来、産業の未来が見えてくるのではないか。本展はそうした提案の場にしたい」(本展に関する原氏へのインタビューは、弊誌最新号にも掲載中)。

▲ 各エキシビションハウスをつなぐ「観覧ブリッジ」

お台場・青海の広い特設会場には、建築家と企業のコラボレーションによる7つの「エキシビションハウス」と、トークイベントを開催する主会場が点在。それらを「観覧ブリッジ」と呼ぶ橋状の通路でつなぎ、来場者はそこを巡回することですべての展示を見ることができる。


▲「2 移動とエネルギーの家」Honda×藤本壮介
太陽光やガスによる発電・蓄電のエネルギーシステムのなかに、歩行アシストや「UNI-CUB」などの移動体を取り込んだ提案。藤本氏は三層のレイヤーで段階的に外部と内部を連続させた

会場構成を担当した隈 研吾氏は、「素材、光、身体に対する感覚の豊かな日本人は、住まいに関することなら世界と勝負できる。それをどのようなパッケージとして世界に発信していくかが重要だ」と話す。今回は10.5角の角材だけを使って会場を構成。この角材は、今後、福島・川内村の建築物に再利用される予定だ。「木の匂いがする橋の上から、各展示を楽しんでいただければ」と隈氏。


▲「3 地域社会圏」未来生活研究会×山本理顕、末光弘和、仲 俊治
多分野の企業が参加する未来生活研究会と建築家3名とのコラボレーション。共有部分を豊かにすることで集合生活知を生かすコミュニティ構想である「地域社会圏」の5分の1模型を展示

いわゆる住宅展示場とは異なり、外装はなく、白いテントの中に家の中身(インフィル)が実寸で展開されている。例えば、パーソナルモビリティを家の中にどう取り込むかを考えた「移動とエネルギーの家」(Honda×藤本壮介)や、「LDK」という考え方をやめ、いかに自分らしい空間をつくるかというヒントを示した「編集の家」(蔦屋書店×東京R不動産)など、これまでの家の常識をくつがえすような新たな方向性を紹介している。


▲「4 数寄の家」住友林業×杉本博司
現代美術家の杉本氏は日本の伝統的な美意識や素材を、中古マンションにも適用できる「数寄の家」として提案。利休の「待庵」を写した旧いトタン屋根の茶室「雨聴天(うちょうてん)」、逆さの竹ボウキを並べた「かえりな垣」など、杉本流のユーモアがたっぷり

▲「5 家具の家」無印良品×坂 茂
収納家具そのものが構造であり、壁となる家

会期中は毎日、建築家や専門家らによるトークセッションが開かれる。家という身近なテーマのもと、来場者の誰もが自分のこととして家や社会の未来に思いを馳せる機会となるだろう。(文・写真/今村玲子)


▲「6 極上の間」TOTO・YKK AP×成瀬友梨・猪熊純
「窓をテーマに、日本の清潔なトイレを広場のように開放的な共有スペースに仕立てた」(成瀬氏)。フラワーアーティストの東 信氏とサントリーミドリエの恊働によって、ジャングルのように敷き詰めた垂直環境緑化の中にトイレが浮かぶ


▲「7 編集の家」蔦屋書店×東京R不動産
「何LDKという考え方をやめ、まずどういう家にしたいのかを積極的に考えることから提案したい」(東京R不動産)。キッチンとベッドルーム、あるいはリビングとバスルームが一体化した空間など、家とは編集が自在であることを伝える


「HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION」

期 間:2013年3月2日(土)〜3月24日(日)
会 場:お台場・青海駅前 特設会場
入場料:一般1,800円、学生1,500円、一般3回券4,500円、学生3回券3,500円




今村玲子/アート・デザインライター。出版社を経て2005年よりフリーランスとしてデザインとアートに関する執筆活動を開始。現在『AXIS』などに寄稿中。趣味はギャラリー巡り。自身のブログはこちらまで。