装いを華やかにした女性のための酒器「春爛漫」
ーーSHIKKI de SHUKI 2013より

「春爛漫」
デザイン:川上良一
漆器制作:白木屋総本家・漆器店、(有)木曽漆工

主に女性の方に、楽しく軽くお酒を飲んでいただきたい……。

春の宵のようにどこか浮き浮きと気持ちも軽く
爛漫の花の中で、桜吹雪のなかで、
お花見宴会のように騒ぐのではなく
春をめで、酒をめで、その酒器をめでながら
まるではらはらと花の散るような時の流れを楽しむ……。
そんな小道具として使ってもらいたいと想いを込めました。

漆器のこころと技術はそのままに、ちょっと見違える軽やかで華やかな装いを考えました。いままでの漆器が現代に調和するのではなく、“漆器が着替えて”現代に調和する。

内面の堆朱(ついしゅ)部分はウレタンは使わず、あくまで漆の伝統的な色を出しました。そして従来の堆朱の色の組合せと模様はあえて避け、今を感じる色の響き合いを大切にシンプルに組み合わせました。外面は花のつぼみのような可愛らしいラインを持ち、無垢の木の肌のままの温もり、触り心地を感じていただけるよう、そっとウレタンつや消しで仕上げています。外見の優しいナチュラルさと咲き始めた花のような盃部分の華やかでしっとりした感じの対比も見せ場です。

川上良一/長野県生まれ。多摩美術大学卒。(株)ダーバン 商品企画室を経て、信州精機(現セイコーエプソン株式会社)入社。宣伝部、デザインセンターを経て、1992年デザインオフィスZESTを設立。

この連載では、去る2月14日〜16日の3日間にわたって、アクシスギャラリーで開催された「SHIKKI de SHUKI 2013展」に出展された9名のデザイナーによるそれぞれの理想の酒器を紹介していきます。