日本の力を試すーPVCデザインアワード 2013/後編

第2回優秀賞の「染めを履く」は、ソフトPVCの仕組みを活用して染色した靴。PVCは単色でしか着色できないが、染色会社との共同開発で新しい技法を考案し、手染めによる美しいグラデーションが実現した。

「日本の力を試すーPVCデザインアワード 2013」の後編です。前編はこちら

異業種からのアプローチも歓迎

PVCの専門家ではない人のアイデアが優秀賞に輝いた例もある。「染めを履く」(森川良一)は、PVCに可塑剤を混ぜて柔らかくするソフトPVCの仕組みを活用して染色した靴だ。普通PVCは単色でしか着色できないが、染色会社との共同開発で新しい技法を考案し、手染めによる美しいグラデーションが実現した。「たまたまPVCが染まったらいいねという話をして、やってみたらできたというのです。われわれのようなPVC専門の人間にはない発想だった」と、主催団体の1つである塩ビ工業・環境協会の一色 実氏。ほかにも、さまざまな材料を配合できるPVCの性質を利用し、触媒を混ぜて消臭機能を付加した製品応募の「空気を洗う壁紙」(ルノン株式会社)など、ファッションや建設など異業種からの斬新なアプローチが高く評価されている。

また一色氏は「審査は必ずしも機能重視というわけではない」とも。第1回で準大賞を受賞した「サクラ」の長谷川茉実さんは学生だった。産学協同プロジェクトでPVCに取り組んだ際、シートの断面が美しいと感じて「これで何か表現したい」とアワードに応募したという。「まずPVCそのものに触れて、純粋に素材の面白さを感じてみるのも1つのアプローチでは」と一色氏。PUSHIONの鈴木氏も「塩ビって持ってみると意外と重さがあるんです。実際に触れることで手から発想されることもあると思う。もともと汎用樹脂として生まれたPVCの役割に立ち返れば、個人的にはシンプルなもののほうが素材の特性を生かせるような気がします。複雑なものはほかの樹脂のほうが向いていることもある」と話す。

第1回で準大賞を受賞した「サクラ」。

受賞者には商品化をサポート

3回目の開催にあたって今まで以上に力を入れるのは受賞後のサポートだ。一色氏は「単にアイデアを集めるだけでなく、受賞した作品がビジネスとして成り立つよう主催側としても責任を持ちたい」と力を込める。アワードの主催が300社近い会員企業から成る団体であることも大きな特徴である。素材から加工までのサプライチェーンを生かして受賞者と企業のマッチングを図り、積極的に商品化を目指したい考えだ。「PVC業界にとって刺激となることはもちろん、広く一般の方々にもPVCに興味を持ってもらえる機会にしたい。そのためにはわれわれもただ応募を待つのではなく、より多くの人が参加してくださるように働きかけていきたいと思っています」(一色氏)。具体的には、応募の際に塩ビについての問い合わせを受け付ける窓口を設置したり、希望者には素材サンプルを提供し、デザイナーや学生向けに各地で説明会や実演の機会を設ける予定だ。

「PVCデザインアワード2013」

テーマ ソフトPVCで日本の力をためす

募集期間 デザイン提案応募 2013年5月7日〜8月7日

賞と賞金 大賞(1点)副賞100万円/優秀賞(3点)副賞各10万円/入賞(10点)副賞各2万円

主催
東日本プラスチック製品加工協同組合、中日本プラスチック製品加工協同組合、
西日本プラスチック製品加工協同組合、日本ビニール商業連合会、
日本ビニル工業会、塩ビ工業・環境協会

応募詳細は同アワードのホームページまで。PVCの特性などの問い合わせに対応するとともに、希望者には素材サンプルを提供中です。

PVCの特性については、連載「デザイナーのための塩ビの教科書」もご覧ください。