五感に語りかける酒器「香る/遊山」
ーーSHIKKI de SHUKI 2013より

「香る/遊山」
デザイン:平林善雄
漆器制作:白木屋総本家・漆器店、(株)山加萩村漆器店、(株)城取うるし工芸、(有)木曽漆工、(財)塩尻木曽地域地場産業振興センター

「香る」(写真手前)
お酒そのものがおいしいことはもちろん、料理や場所、楽しい会話など、味覚だけではなく、「五感」を駆使して、われわれは「おいしいお酒」を感じるのではないでしょうか。ここでは酒器を通じて、そうした五感にアプローチしてみました。酒器が自己主張するのではなく、人の持つさまざまな感覚に働きかけるサポート役、そんな酒器を目指しました。特に、従来日本酒ではあまり注目されなかった「香り」にスポットを当て、その他、手触り感、温度感など、五感に訴えるいくつかの秘密が隠されています。

「遊山」(写真奥)
遊山とは本来は仏教用語でしたが、江戸時代庶民が野山で自然を楽しむことが一般化し、優雅に「遊山」と呼ばれるようになりました。現在も日本の文化として「花見」「紅葉狩り」などのかたちで受け継がれています。都会の中の小さな公園や田んぼの畦道など、今も四季の自然を感じる場所は数多くあります。そんな何気ない場所を「遊山」の舞台に仕立てる装置を考えてみました。江戸時代に「大名膳」「花見重」などと呼ばれた携帯用の重箱をリメイクしたものです。また、お酒は季節によって際立つ種類があるようです。そこで四季それぞれに味わい分ける酒器も考えてみました。

平林善雄 /1950年山形県生まれ。75年日本大学芸術学部卒業、同年諏訪精工舎(現セイコーエプソン)入社。94年よりセイコーウオッチにてSEIKOブランドのデザインディレクターとして活動。2004年よりオリエント時計にて商品開発プロデューサーとして活動。10年よりフリーランスデザイナーとして活動中。諏訪市在住。

この連載では、去る2月14日〜16日の3日間にわたって、アクシスギャラリーで開催された「SHIKKI de SHUKI 2013展」に出展された9名のデザイナーによるそれぞれの理想の酒器を紹介していきます。