「御田町スタイル mitamachi style 2013 showcase」が
東京・六本木のアクシスギャラリーで開催

かつては賑わいの代名詞だった商店街。しかし一部を除き、今では大半がロードサイドの大型モールに役割を取って代わられてしまっているのが現状です。すっかり賑わいから取り残された商店街には、いつしかシャッターを下ろした空き店舗が目立ち、負のイメージを誘うその光景が全国に定着するようになってしまいました。

もちろん、こうした状況に誰もが手をこまねいているわけではありません。若い人たちが中心になって空き店舗を活用したイベントを仕込んだり、市街地の空洞化を防ごうと地域住民が一体となって新たな活動を興したり……。商店街の活性化に向けた試みはさまざまなかたちで展開されています。

▲ 御田町商店街の様子。訪れたのがお盆の最中、しかも定休日の多い月曜日だったこともあり、この日はあいにくシャッターを下ろす商店や工房が目立ちました。御田町商店街を訪問するなら月曜日は避けたほうがいいかもしれません。

そんな取り組みのモデルケースとして全国から注目を集める商店街が長野県の下諏訪町にあります。県内有数の観光スポットとして知られる諏訪大社下社秋宮に近い、長さ100メートルほどで構成される御田町(みたまち)商店街です。雑貨店やカフェ、洋裁店などが肩を寄せ合うように並ぶ小さな通り。何も知らずにここを訪れたなら、昭和の面影が残る風景のいったいどこに、全国で深刻化する空き店舗問題を解決するヒントがあるのかと思うはずでしょう。

10年ほどの前の御田町商店街は、全国の例に漏れず歯抜けのような通りの惨状に悩んでいたといいます。そこで打開策として打ち出されたのが「ものづくりをする人たちに入居してもらおう!」という発想。この地域は昔から農業の副業として、蚕飼いや生糸づくりが盛んに行われていました。また、諏訪湖という豊かな水源を抱えることで精密機械工業も多く営まれ、ものづくりの文化が息づく土地柄であったことが、アイデアを後押しする要因になったのかもしれません。


▲ ”ものづくり開発室”という看板を掲げるゴロンドリーナ。いったい何をやっているところかと恐る恐るドアを開けると、奥のほうから作業着姿の若い女性が現れ、手招きしてくれました。室内には映画や絵本の世界から飛び出してきたような小物類が並び、独特の世界観を醸し出しています。これらの作品を1コマずつ動かしながら撮影し、短編映画をつくるのだとか。

結果として現在の御田町商店街には、古くからこの地で商いを行ってきた商店や日本酒の蔵元に混じり、オリジナル時計の組み立てや天然木を使ったスピーカー、木製家具や革製品を手がけるさまざまな工房が軒を連ね、小さな通りに新たな活気を吹き込んでいます。

入居を望むウェインティングリストが存在するほど活況をみせる御田町商店街。個性豊かな手仕事が集うことで、新たな展開も始まっています。それが、工房が並ぶ街並みを「御田町スタイル」と称してブランド化し、情報発信していく試みです。統一ロゴマークを作成し、宣伝や販売も兼ねて都内で展示イベントを行うなど、活動の輪を広げる動きは新たなファンの獲得にもつながっているようです。

そんな御田町スタイルの仕事を紹介するイベントが、今年は9月19日(木)から3日間にわたりアクシスギャラリー(六本木)で開催されます。会期中は各々の工房作家が会場に立ち、商品説明やものづくりの実演を行います。都内から移住し、2011年から天然木のスピーカー工房「千万音(ちまね)」を営む山本祐二朗さんもそのひとり。お盆の最中に工房を訪ねると、イベントに合わせて新作スピーカーの準備に勤しむ山本さんの姿がありました。音響の良いとされる無垢材から奏でられる優しい音色を知ってもらう好機と展示に期待を膨らませる山本さん。その表情は実に生き生きとし、御田町商店街の活気を物語っているかのようです。


▲ スピーカー類を中心に音響製品を製作する山本祐二朗さん。9月の御田町スタイル展では、ポータブルスピーカーを含む新作3点が会場に並ぶ予定。コンパクトながら驚くほどの臨場感と広がりに満ちたサウンドを、会場でぜひ体感ください。

手仕事によって生み出された商品と、街の魅力という両方をアピールすることで、新宿駅から特急列車で2時間半という場所にある商店街の存在を身近に感じてほしいというのが、展覧会に臨む人たちの一致した思いなのかもしれません。機織り機を会場に持ち込み、長年培った技術の実演を予定するあざみ工房の村上 彪さんは、「声をかけていただければ、何でもお教えします」と、来場者との交流が待ち遠しい様子です。

工房作家の気さくな人柄に触れることで、御田町商店街で営まれる手仕事の魅力はいっそう近いものに感じられるのかもしれません。会場で振る舞われる予定という菱友醸造の「御湖鶴(みこつる)」を片手に、作家さんとの会話に花を咲かせてみてはいかがでしょう。

▲ あざみ工房の村上 彪さん。長年織物会社に勤め、小津安二郎監督の作品で衣装を手がけた経験も。予約をすれば店内に置かれた機織り機を使っての体験も可能。

御田町スタイル mitamachi style 2013 showcase
〜そこに息づく人と、そこで生まれ・つながった手仕事展

会期:9月19日(木)〜21日(土) 11:00〜19:00
会場:アクシスギャラリー(東京都港区六本木5-17-1 AXISビル4階)アクセスマップはこちら>>
主催:匠の町しもすわあきないプロジェクト、下諏訪町商工会議所
共催:下諏訪町、下諏訪観光協会

出展作家:山本祐二朗/千万音(ちまね)、花岡正太郎/SCALE WORKS、宮澤いづみ/時計企画工房SUWA、安田マサテル/Kinopio Crafts&Bikes、村上 彪/あざみ工房
問い合わせ:tel. 0266-27-8533(下諏訪町商工会議所 清水まで)
      e-mail: y-shimizu@cci.shimosuwa.nagano.jp