TOTOギャラリー・間
「犬のための建築展」


TOTOギャラリー・間では「犬のための建築展」を開催中。犬の身になって建築を捉え直すことで、建築の新たな可能性を探っていこうというプロジェクトの一部だ。

▲13組の建築家・デザイナーは、それぞれ異なる犬種に向けて提案。

展覧会を企画・ディレクションしたデザイナーの原 研哉さんは、15年ほど前からこのテーマが気になっていたという。これまで建築は人間主体につくられてきたといっても過言ではなく、「◯◯のための建築」について考えたいと思ったとき、対象を犬にすれば、世界中、誰とでも意見を交換できるのではないだろうか。そんないきさつで「犬のための建築」プロジェクトはスタートしたという。

会場では13組の建築家・デザイナーが設計した建築が原寸大で展示されている。興味深いのは、犬という「施主」に対する建築家・デザイナーのアプローチだ。トラフ建築設計事務所の場合、人間と違ってどんな暮らしがしたいのかわからない「施主」を相手に、はじめは困り果てたという。

トラフがジャックラッセルテリアのためにつくった「WANMOCK」は枠組みだけの建築。その枠組みの上に飼い主の衣服を被せるとハンモックのようになる。狩猟犬のジャックラッセルテリアは血統的に嗅覚が鋭く、飼い主のにおいと戯れるのが大好きという習性に着目した。

▲ 誰でもつくりやすいように部材をできるだけ少なくしたトラフの配慮はさすが建築家。

一方で、内藤 廣さんは、亡くなったばかりの愛犬、スピッツのための建築。毛がふさふさして体温が高いスピッツのための犬を冷やす建築は、飼い主だからこそ生まれたデザインだ。

▲ アルミパイプでできたマットのような建築。アルミだけだと滑るのでかわいそうと、交互に木材を挟み込む工夫も。

展覧会は「犬のための建築」プロジェクトの一部、と先に述べたが、このプロジェクトでさらに重要なのが、建築家やデザイナーが設計した図面は、インターネット上のarchitecturefordogs.comで公開され、世界中の誰もが自由にダウンロードして、自分の犬を思いながら建築をつくることができるということ。そして、自作の建築をウェブサイトにアップロードすることで、大勢とシェアすることもできる。ウェブサイトは展覧会が最初に開催された米国マイアミでの展示に合わせて、2012年12月に開設され、犬のための建築をつくるという動きは、すでにヴァイラル状に広がっている。(文・写真/長谷川香苗)

▲ 会場2階には、architecturefordogs.comの紹介も。


「犬のための建築展」

会 期:2013年10月25日(金)~12月21日(土)
    11:00~18:00(金曜は19:00まで)

休館日:日曜日・月曜日・祝日
    *11月3日(日)、4日(月)は開館

入場料:無料

会 場:TOTOギャラリー・間
    東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
    TEL:03-3402-1010
    *会場へのペット同伴はNG

出展作家
アトリエ・ワン
伊東豊雄
隈 研吾
コンスタンチン・グルッチッチ
妹島和世
トラフ建築設計事務所
内藤 廣
原 研哉
原デザイン研究所
坂 茂
藤本壮介
ライザー+ウメモト
MVRDV

▲ 2階に並ぶのは原 研哉さんによる「D-TUNNELのボレロ的展開」。「犬の高さを変える」というコンセプトはそのままに、アイデアのバリエーションを大小の模型で展示する。