原美術館
「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」

▲ 森村泰昌と「家族の肖像・妻」1994年

当展は、現代美術家である森村泰昌の1994年に原美術館で開催された個展を、2013年に再現した展覧会だ。会場、展示作品だけでなく、キュレーターまで20年前と同じというのだから恐れ入る。最も当時よりも大幅に改善されたのは、美術館の照明機器。より見やすくなった会場で、作品に再会することができる。

94年の森村泰昌の展覧会は、実は美術館で行われた最初の個展。今や日本を代表する現代美術家で、来年行われるヨコハマトリエンナーレ2014のアーティスティックディレクターも務めるという。絵画の登場人物に「なる」ことで、人間性や社会問題に迫る手法は当時から変わらない。

さて、今回の展覧会で森村が「なった」のは、レンブラントとその周辺の人物。レンブラントは、セルフポートレイトでよく知られた画家である。その点で森村に共通する部分が多い。冒頭で紹介した「家族の肖像・妻」では、レンブラントの妻に扮している。同じ展示室にレンブラントの愛人に扮した作品があるのはご愛嬌だ。

▲ 「白い闇」(1994年)が展示された原美術館の一室

森村のレンブラントに「なった」シリーズは、闇と光のコントラストが印象だ。セルフポートレイトはどんどん老いていく自分を写し出し、凄みを増していく。そして、展示の最後の部屋に置かれているのは、屠られた牛の肉を吊るした「白い闇」。それまで僅かな光量しかなかった展示室から明るい部屋に足を踏み入れると、見えるはずのものがよく見えない。ここで展示が終わることに、作家の意図をあれこれと推測するものだ。

脚光を浴び始めた当初はどこかキワモノ的な印象があった森村だが、20年前の作品に対峙していると、当時から質が高かったことを認識させられる。

今回森村は、20年前は気が付かなかったことを発見したという。「恰幅の良いセルフポートレイト 1640」を描いた際、レンブラントは自分の富を周りに見せることを意図していたと当時は推測した。ところが今は、自分自身に対する戒めを込めてこの絵を描いたのではと、想像するのだとか。

ともあれどんな世界でも、20年前の自分の仕事が誇れることは、間違いなく立派なことだ。(文・写真/ジョー・スズキ)

▲ 「恰幅の良いセルフポートレイト 1640」1994年


「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」

会 期 10月12日(土)〜12月23日(月・祝)
    11:00〜17:00(水曜は20:00まで)
    月曜休館(祝日にあたる12月23日は開館)

会 場 原美術館

入館料  一般1,000円 大学生700円




ジョー・スズキ/ライフスタイルを中心に、国内外のメディアに寄稿する文筆家・写真家。特に海外デザイナーや社長のインタビューを得意とする。デザインプロデューサーとしての顔も持つ。