vol.2 パナソニック
「SLIDING NATURE」with トラフ建築設計事務所

パナソニックは「SLIDING NATURE(呼吸する家)」というコンセプトのもと、自社の建材引戸の可能性を指し示す展示をトラフ建築設計事務所による設計・構成で発表した。展示はYKK APと同じく、ミラノ大学の中庭を使ったグループ展「FEEDING NEW IDEAS FOR THE CITY」内(4月18日まで開催中)。

15世紀に建てられた建物の中庭に、壁が引戸のみで建つ家型のオブジェを設置。四方の引戸を開け放つと、囲い込まれていた空間(プライベートの領域が消えて、中庭のパブリックな環境)と一体となるような構造体だ。三連になった引戸をスライドさせると、周囲の景色を取り込むことができる。だから「SLIDING NATURE」。

考えれば、昔の日本の住宅は風を通し、光を取り入れ、自然の力を室内に取り込み、空間の仕切りを変えるために引戸を用いてきた。その引戸の可能性を見直し、さらに引き出すのが今回の展示だ。

また、開閉する引戸の動きに合わせて、構造体の天井、中庭に散りばめられた植物に見立てたLED電球が明滅するようコントロールされている。温度センサーによって日中の暖かい時間帯には引戸が開き、涼しくなると引戸が閉まるようにプログラミングすることも可能だろう。


▲ 今回の展示にあわせ、すでに販売されている「Archi-spec HIKIDO」を少し大きくした引戸を開発。

この展示はパナソニックの持つ省エネ製品のLED照明と、構造体や断熱材を通して自然環境を効率的にコントロールするパッシブエネルギーマネジメントを組み合わせた現実的な住環境の提案にもなっているところが大きなポイント。

ミラノサローネへの参加は今年で7回目となるパナソニック。今年の出展について「抽象的でなく、もう少し具体的に住宅に落とし込める提案をしていきたかった」とパナソニックの担当者は語る。そうした意味でも近い将来、住宅に応用できるヒントがたくさんつまった展示だと感じた。
(写真/Santi Caleca  文/長谷川香苗)

▲ 四方の引戸を開け放ったときに、構造体として持ち堪えるための軒組の太さ、長さを決めるのに時間を要したという。