vol. 51
「フィッシュホール」


日本ではワカサギ釣りで知られる穴釣りは、世界的にも各地の凍結湖において、さまざまな魚を対象に行われている。

穴釣りは、一見すると、魚の側に圧倒的に不利な、ただ釣り人の楽しみのためだけにあるように思える漁法だ。しかし、その実、氷に空けられた穴は、冬期の氷面下で不足する酸素を空中から補う役割を果たし、魚にとっての恩恵ももたらしてきた。

ところが、分厚く凍り付いた湖面に必要なサイズの穴を空けるにはそれなりの労力を要し、あちこちに放置された穴に人が転落する危険性もある。

そこで中国の廣州美術学院のジャン・ツァングとワンリ・ヤンが考え出したのが、「フィッシュホール」と呼ばれるコンセプトデザインだ。

くびれのある二重の円筒構造を持つフィッシュホールの利用法は、湖に氷が張る前に適当な間隔で水面に浮かべておくところから始まる。調整された浮力と重心設計により、フィッシュホールは直立した状態で湖面に留まるようになっている。

やがて湖面が凍結するとフィッシュホールが固定され、内側の筒を外すことで一緒に穴の部分の氷も簡単に引き抜くことができる。

この穴を通じて酸素が水に溶け込むと同時に、魚に餌を与えられ、もちろん釣りも楽しめる。そして重要なのは、氷上に屹立した部分が、遠くからでも穴の位置を正確に把握するための目印になるとともに、転落を未然に防ぐセーフティガードとして機能する点だ。

単純だが、複数の機能性を同時に満たすフィッシュホールは、デザインの力で解決できる問題が意外なところに存在していることを教えてくれる。