香港ビジネス・オブ・デザイン・ウィーク2015
「レガシーを認識し未来を見つめる、アジアデザイン賞」

14回目を迎えた香港デザインセンター主催のビジネス・オブ・デザイン・ウィーク(BODW)。そのハイライトは、社会に貢献し暮らしを少しでも豊かにするデザインをたたえるアジアデザイン賞(Design For Asia Awards)の授与にある。過去・現在・未来の視点からデザインに光を与えているところが特徴だろう。長年にわたるデザインへの功労者に贈られるLifetime Achievement Awardは、ポルシェのチーフカーデザイナーとして数々の名車のデザインを手掛けてきた香港出身のピンキー・ライ氏が受賞。

Lifetime Achievement Awardを受賞したピンキー・ライ氏

テープを使ってポルシェ996のデザインをするピンキー・ライ氏

傑出した中国のデザイナーに贈られる World’s Outstanding Chinese Designer Awardは長年イタリアの家具ブランド、ジョルジェッティのアートディレクターとして活動してきたチ・ウィン・ロ氏が、そしてデザインマインドでビジネスを牽引してきたDesign Leadership Awardは紅茶をラグジュアリーライフスタイルとしてブランディングすることでこの7年間のうちに急成長を遂げた「TWC Teas」の創業者、タハ・ブクビブ氏が受賞した。

World’s Outstanding Chinese Designerに選ばれたチ・ウィン・ロ氏(左)。

チ・ウィン・ロ氏による円形キャビネット。前面の開口部を回すことで中のしまっているものを取り出すことができる斬新なデザイン。

Design Leadership Awardを受賞した「TWC Tea」の創業者、タハ・ブクディブ氏(左)

さらに現在のデザインをたたえるのがDFA Design for Asia Awards。こちらはアジアの美意識や文化を反映したデザイン、ならびにアジア圏での暮らしに影響を与えるデザインを生んだ企業そしてデザイナーに贈られる。アジア圏および米国、英国、ドイツからの審査員の推薦によって候補者が選ばれるグランドアワード、カルチャーアワード、サステイナビリティアワード、テクノロジーアワード、そのほかファッション、コミュニケーション、プロダクト、環境空間など18の部門への応募によるカテゴリーアワードの5つ。

グランドアワードを受賞した「成都遠洋太古里」プロジェクト。

2015年度は世界24カ国から756の応募が寄せられた。必ずしもアジアでデザインされたものに限らず、アジアの暮らしに大きな影響を与えたという意味でアップルウォッチも受賞している。そうしたなか、日本のデザインが数多く受賞していたことは特筆すべきこと。チームラボの「お絵かき水族館」、乃村工藝社による姫路城修復およびAR技術を用いた「姫路城大発見アプリ」、シンプリシティによる和紙の器に漆を施した「nuri WASARA」、日本産杉間伐材を用いたブランドKINOWAの照明器具「BEAM」などが受賞した。いずれもすでに日本では評価の高いアート作品やプロダクトだが、アップルウォッチと同等にユニバーサルに評価されたことになるだろう。英語圏の香港での受賞は世界に向けた発信力としては魅力的なはず。今年のアワードの応募は4月から始まるので多くのエントリーを期待したい。

グランドアワードを受賞した「SEIL bag」。自転車利用者が1,500万人に達する韓国で事故を防ぐために考案されたサイクリスト向けバックパック。走行中、ハンドルに取り付けられたコントローラーで左折、右折、停止の合図を出すとBluetoothで文字が表記される。韓国政府やクラウドファンディングによる助成で製品化を実現した。

そして未来のデザインをサポートするためにDFA Hong Kong Young Design Talent Awardが設けられ、香港を拠点にする35歳以下のデザイナーの活動が奨励された。アジアデザイン賞はこうしてレガシーを認識しながら未来のデザインを創造していくプラットフォームとしてこれからも重要な役割を担っていくことだろう。(文/長谷川香苗)

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