vol.71
「3Dプリント可能な液圧メカニズム」

実は、この原稿を書いているすぐ横で、一辺20cmの立方体型マイクロ3Dプリンタが、筆者の設計したあるパーツの出力作業を数時間前から続けているのだが、昨今の3Dプリント技術の進化は止まるところを知らない。

最近の話題で特に興味深いのは、実際の市販化はまだ少し先としても、MITが先ごろ発表した「Printable Hydraulics(プリント可能な液圧メカ)」(リンクはこちら)だろう。

3Dプリンタは、原理的には、素性や硬さの複数の異なる素材を用いて、構造のみならず電気回路なども含めた造形を、一度に行うことができる。それを、固体素材のみならず液体も混在させた状態で、3Dプリント可能な状態にまで高めたのが、MITの研究成果だ。


「プリント可能な液圧メカ」では、印刷中の造形物を支えるサポート材のほか、硬軟2種類の固体素材と液体を使ってレイヤーを構成する技術が確立されており、柔軟で継ぎ目のない構造のなかに液体を封じ込めることができる。

これを応用すると、例えば液体を押し出したり、液体の流入によって変形・拡張するような機能性を持つパーツを内包した造形物を一括出力することが可能となる。しかも、シャフトやギアを組み込む余裕がないスペースでも、液体を介して動力を伝えられるのだ。

MITのサンプル出力では、単純に左右のジャバラが関連して動作する模型や、形状の工夫で指を曲げるように動く機構に加えて、多足生物を思わせるロボットも1度の一括プリントによってつくられる。

今はまだロボットのモーターと電池、配線は後付けだが、これらの要素が構造部分と同時に3Dプリント可能となるのも時間の問題と思われる。