vol.76 ベルリンのコンセプトショップとスーパーで見つけた対極的デザイン

このコラムでは、ときどき、筆者が訪れた外国の都市で見かけたり、購入したりしたデザインアイテムを紹介してきたが、今回も、先日、2度目の滞在となるベルリンで「気ニナッタ」ものをピックアップしたいと思う。

1つ目は、ベルリン動物園にほど近い、ビキニ・ベルリンという商業施設のデザイン系セレクトショップで見つけた「カロト」というピーラー。

ちょうど鉛筆削りをスケールアップした形のこの製品は、パッケージからもわかるように、人参などの根菜類の皮を剥いたり、まさに鉛筆を削るように桂剥き的な薄く長く切り出すことができる。筆者は、野菜の薄切りでパスタ風の一品をつくることがあり、これまでは普通のピーラーを利用していたが、カロトはそのような用途にピッタリだ。

メーカーは、イスラエルのモンキービジネス(http://www.mnkbusiness.com)という企業で、ここは家族経営でデザインもインハウスで行っており、ほかにもウィットに富むプロダクトを送り出している。

これに対して、キッチン用の機能主義的なマルチツールとしてデザインされているのが、2016年のドイツデザイン賞も獲得しているキボニ(http://en.kiboni.com)の「ボブ」という製品。

樹脂製のレンチのようなフォルムは、ボトルのキャップを回したり、栓を抜いたり、ジャーの蓋を開いたり、缶のプルトップを持ち上げたりするための要素を集約してでき上がった。

この製品は、そのミニマリスト的な形状からも想像がつくように、バウハウス資料館のミュージアムショップで買い求めた。しかし、キボニのモットーは「日常使いできるデザイナープロダクト」であり、大手のスーパーなどでも販売されている。

初夏のベルリンは、東京や大阪と同じように気温が高く、水分補給が欠かせなかったが、たまたま入ったスーパーで見つけたのが、パールロイヤルのココナッツウォーターだ。

タイのバンコクに本社を持つパールロイヤルは、中身のフレッシュさを保つ製法の開発に2年を費やす一方で、差別化のためのパッケージデザインにも力を入れ、皮を剥いたココナッツを思わせるフォルムと質感を巧みに採り入れている。正確な素性は不明だが、紙パルプ素材をベースとしているようで、リサイクル性も高そうだ。

飲む際には、上部の紐を引っ張ることで、ストロー挿入口の奥まった位置にあるシールが外れる仕組みで、コストをかけてもこの形を実現したかったメーカーの思いが伝わってくる。もちろん、ココナッツウォーター自体も美味しく、乾いた喉を潤してくれた。

ちなみに、現地では、社会主義的な街の雰囲気が残る旧東ベルリンのフリードリッヒスハイン地区にほど近いニューベルリンというホテルに宿泊したのだが、ここでもユニークなアイデアに出会うことができた。

このホテルも、ドアの鍵はキーカード方式となっており、フロントでそれを紙製のスリーブに入れて渡される。ところが、一般的なスリーブに比べて少し厚みがあるので、よく見ると折り畳まれた紙が挟まっていた。そのまま開くと、ホテルの施設案内や周辺の地図、鉄道路線図が印刷されていて、再び折り畳むのも簡単に行える(ただし、いわゆるミウラ折りではない)。これなら持ち歩きやすく、ホテル側もわざわざ別の印刷物を渡さずに済むので、スマートな情報提供の方法だと感じた。

次回は、今回の原稿にも出てきたユニークな商業施設、ビキニ・ベルリンを紹介する。