見たこともない表情のガラス
「トヤママテリアル」

3月10日(金)と11日(土)の2日間、東京・六本木のアクシスビル地下1階のシンポジアで開催された「トヤママテリアル」。富山ガラス工房が主催し、ガラスと異素材の多様な組み合わせをつくり出して会場を構成。6種類の新たな作品が並び、来場者もその今までにない表情を興味深く見入っていた。この展示会が終わりではなく、これからどんなことができるかを探るための展示だった。会場構成・デザインディレクションは近藤康夫氏。

フューズミックスガラス

「フューズミックスガラス」は、板ガラスに穴を空けたときに出る「丸ガラス」の山を廃材の中に見つけたことから制作が始まった。波紋や円にはじまり、雨紋、菊繋、多面柄などさまざまなバリエーションを提案。粒の大きさ、透明度などある程度のコントロールが効くという。

フュージング・アートガラスパネル

「フュージング・アートガラスパネル」は、新幹線富山駅の高架下の路面電車停留場で実際に使われているものだ。熱で溶着する技術とガラスの素材の開発によって、着色したガラス板同士や切子ガラスなどのパーツを組み合わせることに成功し、一般的なステンドグラスにはない表情をつくった。

グレイス ラボ

セメントの中にガラスや貝などの素材を混ぜ込み、今までにないカラフルなセメントが並んだ「グレイス ラボ」。鳥居セメント工業との共同制作によって生まれ、最終仕上げは人の手で行われている。セメントの自由度が高いため、どんな形にも落とし込むことができる。今後は受注生産で対応していくという。

ガラスブリック

サンドキャストと呼ばれる、高温で溶融したガラスを砂型で鋳造する技術を使って、透明なガラスの中に様々な色のガラスを閉じ込めて、流れるような表現に取り組んだ「ガラスブリック」。約100色のガラスは濃淡、形などさまざまで同じものがひとつとしてない。組み合わせを考えると、さらなる展開ができそうだ。

虹彩ガラス

三芝硝材とコラボレーションした「虹彩ガラス」。2枚の曲げガラスの間に虹彩フィルムを溶着し挟んでいる。ガラスの表面をカットすることで反射や透過にバリエーションをつけることができる。落ちる影の美しさが特徴で彩りのある空間づくりが期待できる。

メタルコート・アートガラスブロック

高温で溶融したガラスを金型鋳造するホットキャスト技法で制作した厚みのあるガラス。それをメタルコートで覆い、質感や光の反射・屈折を追求したのが「メタルコート・アートガラスブロック」。メタルコートには、金や銅、クロムなどのバリーエーションがあり、酸化や使い方により表情が多様な表情が生まれる。これらは新幹線富山駅の高架下自由通路の「フロア・シャンデリア」に使われている。

近藤氏は工芸的な作品にとどまらず素材をそのままに、そして今後の広がりを持たせることを意識して会場構成したという。富山ガラス工房館長の野田雄一氏は「今後もこうした展示を続けて、新しいコネクションからそこにしかないものをつくっていきたい」と話す。(文/今野敬介)

富山ガラス工房/ガラスのまちづくりに取り組む富山市に工房を構える。技術と芸術、産業と文化を結ぶガラス造形作家の拠点となっており、常時体験コースを設けるなど人とガラスのふれあいの場としての役割を果たしている。