年末年始は芸術祭で「地域」を感じる。
やんばるアートフェスティバル2017-2018 ~ヤンバルニハコブネ~

沖縄県北部で初となる地域芸術祭

今月より、沖縄県北部で初となる地域芸術祭「やんばるアートフェスティバル2017-2018 ~ヤンバルニハコブネ~」が開催されている。やんばる(山原)とは沖縄本島北部一帯を指す俗称であり、手つかずの自然や伝統工芸、祭祀、芸能にあふれた豊かな原風景が広がる一帯だ。
「東洋のガラパゴス」とも呼ばれるこの神秘的なエリアで、仲程長治氏総合ディレクターのもと現代アートからデザイン、エンターテインメントまで幅広い才能、表現があつまる本芸術祭。その開催地域の魅力を一部お見せし、読者のみなさまの年末年始の過ごし方に一石を投じたい。




名護市庁舎

やんばる地域の入り口として、来た者の目をひく独創的な建築。それは地域行政を司る公共建築・名護市庁舎である。
1981年、象設計集団によって設計された本庁舎は、独創的な外観のみならず、地域の気候に合わせて適度な風通しや日よけの仕組みを盛り込んだ優れたデザイン、意匠と設計が反映された建築だ。
通常一家に2体のシーサーが設置される沖縄家屋であるが、本庁舎のシンボルとも言える大量のシーサーは、56体にも及ぶ。設計当時の名護市内の集落の数(55)に本庁舎を加えた数だけ存在するシーサー群、それらを構える名護市庁舎は、名実ともにやんばるのシンボルのひとつと言えるだろう。庁舎は芸術祭の会場となってはいないが、ぜひ立ち寄ってほしい。


▲独創的かつ機能的な佇まいで、来訪者を迎える名護市庁舎




アグー像

名護市庁舎のすぐ先、名護市民会館前には名物「アグー像」がどっしりと構えている。沖縄アグー豚とは中国に由来する良質な肉質をもった種で、頭数が少ない上に体重が通常の豚の半分〜三分の一ほどしかない、貴重な琉球在来豚だ。
実際のアグー豚の約3倍の大きさをもつインパクトあるオブジェとして2013年に設置されたアグー像。多田弘氏(植物空間演出家)と濱元朝和氏(彫刻家)による空間アート「アグーの森」(Agu Forest)として生まれ変わったその姿を、是非その目におさめてみてはいかがだろうか。


▲アグー像




喜如嘉の芭蕉布

喜如嘉(きじょか)とは、沖縄県国頭郡大宜味村にある集落の名前。ここで作られている芭蕉布(ばしょうふ)とは、世界で唯一、バナナの仲間である糸芭蕉から糸をつむぎ、生地へと織り上げた歴史ある織物であり、栽培から加工まで、長い時間と労力、歴史の中で蓄えられた知恵と技術がつまったものづくりの結晶だ。フェスティバルの会場のひとつでもある「芭蕉布会館」と隣接する畑で、是非その現場を垣間見ていただきたい。



▲生い茂る糸芭蕉




琉球びんがた

クラフト部門で出展もされている「琉球びんがた」も紹介したい。
15世紀に端を発すると言われる鮮やかな染織は、沖縄を代表する伝統工芸のひとつとして脈々と受け継がれている技術だ。

▲鮮やかな色彩に至るまで様々な工程をふむ

▲びんがた工房の様子




大宜味村立旧塩屋小学校

最後に紹介するのは、フェスティバルのメイン会場となる大宜味村立旧塩屋小学校だ。使われなくなった校舎というのは一般的には不気味なものとして捉えられがちだが、塩屋湾に隣接する廃校舎、特に体育館から望める風景の美しさは、今もなお変わらず生き続けている。





芸術祭を契機にさまざまな作家や作品が一同に会すことは魅力的なことだが、それと同時に、その地域が持っている本来の魅力や価値を肌で感じること、その土台をもった上で、人間が生み出す文化や芸術を味わう機会を、この年末年始に沖縄で、体験してみてはいかがだろうか。




▲カフェスペース「ハコブネ」として開放されている

▲フェスティバル開始後のメイン会場の様子




やんばるアートフェスティバル2017-2018 ~ヤンバルニハコブネ~

開催期間
2017年12月9日(土)~2018年1月8日(月)
一部会場を除いて1月21日(日)まで延長決定
 延長する開催会場・開催日など詳細は、公式HPを参照ください
主催
やんばるアートフェスティバル実行委員会
会場
沖縄本島北部地域。大宜味村、国頭村、本部町、名護市ほか
公式HP
http://yambaru-artfes.jp/