光と反応するタイル
スペインのメーカー、ペロンダの 「FADING」

▲FADINGが壁と床に使われている。

セラミック製の床材、壁タイルを専門とするスペインのメーカー、ペロンダ 。同社のデザイナーシリーズ「HARMONY」から昨年発表された「FADING」。デザイナーはプロダクトデザイナーの倉本 仁さんです。その特徴は光の反射がデザインの起点になっているところ。倉本さんにお話を聞きしました。

▲柄のないタイプには釉薬がかかっていない。柄がひとつだけのもの、柄と柄が重なるものなどのバリエーションがある。

FADINGは、倉本さんのデザインとして同ブランドから2つめの製品となります。今回は、釉薬と柄とのコンビネーションをテーマにデザインを追求したとのこと。この製品に使われているのは透明な釉薬で、ペロンダが独自開発したインクジェットによって吹き出せる特殊なものです。光沢のレベルを微妙に調整することができ、自然光や人工光の当たり方で見え方が違ってきます。見る角度によっても違うため、使用される空間の個性を引き出すことができます。

▲直線と丸が重なるタイプ。色はグレー、ブルー、ピンク、ブラックがある。

倉本さんは、タイル同士の組み合わせ方でシンプルにもアクティブにも表現できると言います。1枚のタイルのベースは釉薬がかかってないマットな状態で、柄の部分に釉薬がのっていることで、光を柄の部分が受けて平面のタイルが立体的に見えてきます。最も苦労したのは、4色あるカラーバリエーションの調色と透明釉とのバランス、光沢の度合い。メーカーの開発部門とのやり取りでは、妥協することなく限界まで挑戦したそうです。

▲微細な光も受け取り、落ち着いた光沢を発する。色違いのタイルを組み合わて、空間にリズムを与えることができる。

特殊な透明釉薬の調合により、艶がありすぎると光の乱反射につながり、空間に影響が出てきます。白色光や暖色光、光源の種類や差し込む光の角度でも見え方が変わります。倉本さんは、空間にどのようなイメージが出るかを想定して、慎重に仕様を決定したとのこと。

▲FADINGについて説明をしてくれる倉本仁さん。現在、海外のさまざまなメーカーとのプロジェクトが進行中。

自然光が差し込む日中と、日没後の人工光の下で表情を変えるタイル。空間に個性を与えるタイルとして商業施設から住宅まで幅広いニーズが予想されます。

取材協力:JIN KURAMOTO STUDIO http://www.jinkuramoto.com/