JAMES DYSON AWARD 2018 受賞作まとめ
国内外の若手デザイナーが注視する課題とその提案群

ジェームズダイソン財団は、同財団が主催する国際エンジニアリングアワード、JAMES DYSON AWARD 2018において、世界27の国と地域、1,300を超える作品の中から、各国にて国内審査を通過した81作品より、国際TOP20を選出。その中から最終審査員を務めるジェームズ・ダイソンによる最終審査を経て、国際最優秀賞1作品と国際準優秀賞2作品が決定した。

本稿では、国際TOP20に選ばれた作品たちやその中から最終的に選定された国際優秀賞の3作品はもちろん、2018年9月に発表された日本国内応募作品の中から選ばれた国内優秀賞の受賞作品3作品をあわせて紹介していく。

国際TOP20受賞作

まず紹介するのは、世界27の国と地域、1,300を超える作品の中から、各国にて国内審査を通過した81作品より選ばれた国際TOP20の作品たちだ。

ダイソンのデザイン・新テクノロジー担当バイスプレジデントを務めるピーター・ギャモックが、「今年の応募作品の幅広さと志の高さは突出しています。若きエンジニアたちは国際的な課題を前に休むことを知りません。彼らはより良い未来を創るための起爆剤としてテクノロジーを捉えているのです。シンプルで独創的なコンセプトには人々の暮らしを変革する力があることを彼らがはっきりと示しています」と述べているとおり、グローバルな視点での課題の抽出とその解決案は目を見張るものばかりだ。以下、一点一点紹介していく。

湖の水質を浄化するロボット:Orca

ジャンナン・ジュー、ユウェイ・チェン、ジェ・ワン(中国)の3名が手がける Orcaは、汚染された湖の水質を浄化するロボットだ。

ヨハネスブルグからラスベガスまで多くの都市が、プラスチック廃棄物の蓄積や、汚染水排出による深刻な湖の水質汚染に悩まされている点に着目。Orcaは手動の浄水器よりも最大7倍速く、70%低いコストで湖をきれいにする可能性を秘めている。

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脊髄の損傷を防ぐネックカラー:NECO

スイスのチューリッヒ芸術大学に在籍する4名、アストリッド・ヴェルティ、エリアーニ・ジールマン、フィリップ・ゴールディン、ファビオ・マイヤーらが手がける NECOは脊髄の損傷を防ぐためのネックカラーだ。

現在、ネックカラーは一般的にハードなもの、ソフトなものの2種しかない。これは従来のネックカラーとは異なり、NECOは首の前から取り付けることが可能で、患者の頭を持ち上げる必要がない。また、首のサイズに合わせた調整も可能になっている。

ネックカラーの取り付けがいっそう迅速、容易、効率的になることで、更なる損傷のリスクを減らすことの一助となるだろう。

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ジャガイモが材料のプラスチック:Potato Plastic

ジャガイモを材料とする生分解可能な“プラスチック”である Potato Plasticを開発したのは、プラスチックの使用を制限し、消費習慣を変えることを目指す、スウェーデンのルンド大学のポントゥス・トルンクヴィストだ。

世界の海洋には800万トンのプラスチックごみが存在しており、食品産業はこのごみの主な排出源のひとつだ。本作品は、ジャガイモのでんぷんを材料とし、ストローからナイフやフォークまであらゆるものに利用可能らしい。しかも使用後たった2か月で堆肥へと変化するエコなプラスチックだ。

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容易に使用できる中心静脈カテーテル:CEVEC

ドイツのムテジウス芸術大学に在籍するガブリエル・ミュラーが開発した CEVECは、より迅速、容易に使用できる、緊急時用中心静脈カテーテルだ。

中心静脈カテーテルとは心臓に挿入される大きなチューブのことで、一般には緊急時にのみ使用される。要は、移動中の救急車内など、不安定な環境で処置が行われることが多いわけだ。本作品は、その容易でない状況でも中心静脈カテーテルの処置がより迅速に、容易になるように設計したものだ。

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視覚が不自由な人が安心に使える包丁:Folks Kitchenware

シンガポール国立大学のケビン・チャムが着目したのは、視覚に頼ることができない重い視覚障害のある人々が、毎日夕食を準備する中で鋭い調理器具を扱うことだった。誰もが安全に、自信を持って、落ち着いて食事の準備ができるように、開発されたFolks Kitchenwareは感覚と触覚による手掛かりを利用。自分の指を傷つけることを避けて刃を下ろし、手に持っている野菜をスライスすることができる。

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拡大する食糧需要に応えるアリの巣:Azcatl

メキシコ国立自治大学のカーラ・ロサレス・ガルシアとマリアナ・セルバンテス・マシアスの2名が開発したのは、Azcatlというプレハブ式のアリの巣だ。

世界人口は2050年までに90億人に達すると見込まれており、食肉を好む中産階級も拡大することになる。人類の食肉へのこだわりから、その消費量はこの40年間で50パーセントも増加しており、農業界が代替のタンパク質源を速やかに見つけ出す必要に迫られている。

そこで二人が着目したのは、”昆虫”だ。本作品は、アリがいっそう迅速かつ容易にコロニーを構築できるプレハブ式の巣。彼女らはこれを皮切りに、虫を中心とするまったく新しい経済の口火を切ることを目指しているようだ。

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医療用チューブの詰まりを検知する:MEDMO

ニュージーランドのヴィクトリア大学ウェリントン校に在籍するアナ・モリス、グレン・アスキー、コートニー・ネイスミスの3名が提案したのは、医療用チューブによる詰まりなどを検知する装置 MEDMOだ。

カテーテルなどの医療用チューブは、しばしば漏れたり、詰まったり、感染を引き起こしたりすることがあり、これが患者の快適さに影響を及ぼし、治療の効果を制限することにつながっている。この点に着目した同作品は、液面レベルを測定、詰まりなどの異常が見つかるとリアルタイムで利用者に情報を提供し、患者に注意喚起を行うスマートな装置となっている。

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非付着性ホイルを使用するアレルギー検査を針を使わず可能に:OPOD

「アレルギー検査が好きな人はいない。もしかしたらこのことが、アレルギーを診断する皮膚プリックテストでイノベーションが起きない理由なのかもしれません」と語るベルギーのアントワープ大学のイネケ・ヴェルヘが提案するのは、OPODと名付けられたステッカー型の非付着性ホイルを使うアレルギー検査を容易にするキットだ。アレルギー反応が陽性の場合、皮膚の隔離領域でOPODステッカーの色が変化する。

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発展途上国での洪水時に役立つ手軽、低コストな救命ボート:POD

インドのケーララ州からナイジェリアまで、この10年間で洪水被害は50%増加している。インフラが整っていない開発途上国では、洪水の際の最大の死因は溺死だ。ここから、より手軽な救命ボートに対する切実な需要があるのではと着目した香港理工大学のキン・パン・ローが開発したのが、軽量、低コストかつ丈夫な PODという救命ボートだ。必要になるときまでは折り畳んで家の中に保管しておくことができる手軽さが魅力だ。

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発電所の廃水をきれいな水として再生する装置:Infinite Cooling

マサチューセッツ工科大学のマーヘル・ダマックが提案したのは、発電所の排水からきれいな水を再生できる装置 Infinite Coolingだ。

▲Tackling the global water crisis

本作品は、世界の電力の81%を生み出す発電所が最も多く水を消費する施設のひとつであることに着目。流水はエネルギー抽出に不可欠な要素であるため、発電所では一般的に冷却塔を使用しているが、ここで水の一部が蒸発して残りの水が冷却されている。本作品は冷却塔の水煙から大量のきれいな水を再生できるように設計されている。

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火災時の抵抗力を引き延ばすウェットマスク:Water Mask Dispenser

韓国の国民大学校チームの提案は、火災時の煙の吸い込みを最小限に抑えるウェットマスク Water Mask Dispenserだ。例年、火災時の死因の推定50~80%が煙の吸い込みによるものだが、火災時にはほとんどの人が本能的に衣服で口を覆う。ただ、それは水で濡らすだけで2.5倍にも効果が上がるのだ。

本作品は消火器の隣に設置され、湿ったマスクを被災者に提供できるように設計されており、火災時にこれを利用することで利用者が抵抗力を引き延ばすことができる。

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痙縮患者に適切な処置をサポートする装置:Smarp-ID

世界の痙縮(けいしゅく)患者の数は推定1,200万人もいることをご存知だろうか。彼らは、痛みを伴う筋肉の痙攣、疲労、こわばりに日々苦しんでいる。アントワープ大学のサム・スメッツは、ソフトとハードウェアを一体化したSmarp-IDを開発。

これを用いることで、患者は関節の筋活動を測定し、そのデータを利用して痙縮が起こる場所をあらかじめ予測することができるようになる。また、副木の操作方法についてアドバイスを提供し、最も効果的な治療をサポートできる仕組みだ。

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乳がん放射線治療をより快適にする装置:Prone Crawl Breast Board

ベルギー、ゲント大学のバート・ボーテが提案したのは、乳がん放射線治療をより効果的快適にする装置 Prone Crawl Breast Boardだ。乳がんは世界で最も多く診断されている女性のがんだが、治療は未だに女性に適しているものはない。

うつ伏せでの胸部放射線治療の場合、女性は平坦なブレストボードの上に置かれる。患者にとって、これは極めて不快である上に、ビーム経路がリンパ節を標的にできないため、治療の効果が制限されてしまうという欠点がある。本作品は、女性がよりリラックスし、ケアされていると感じられるように、改造された装置だ。

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開発途上国に向けた地震予測装置:Terra

スウェーデンのウメオ大学に在籍する3名、フェルディナンド・アイクリドラーとパトリック・クラスニツァー、マニュエル・ヘスらが提案するのは以前こちらの記事でも紹介した地震予測装置 Terraだ。

日本からイタリアまで世界中の非常に多くの人々が、頻繁に地震が発生する地域に住んでいるが、多くはインフラがより損害を受けやすい開発途上国だ。本作品は地震が発生した際により損害を受けるリスクの高い開発途上国において早期に警報を出せるように設計されている。

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3分未満で回路基板をプリントする装置:Printem

カナダ・トロント大学のペルマル・ヴァルン・チャダラヴァダとグロウハム・ラマチャンドランは、3分未満で回路基板をプリントできる装置 Printemだ。

現在、プリント回路基板の生産には最長で1週間かかる場合があるため、試作品の製作や最終的には製品開発ライフサイクルに遅れが生じる場合がある。本作品は、オフィスのプリンターを所有していれば、誰でも3分未満で回路を作成できるようになる装置だ。スタートアップ企業から若きエンジニアまで、あらゆる人にエンジニアリングの可能性を広げるだろう。

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輸送中の食品廃棄を防ぐステッカー:FreshStrips

人間が消費するために生産される食料の3分の1が世界中で損失・廃棄され、この食品廃棄の10%以上がサプライチェーンにおいて発生している。その原因が多くの場合過剰な熱によるものなのだが、この点に着目したオランダのアイントホーフェン工科大学のマリオス・クリソルーリスとクーン・ニックマンズだ。

彼らが開発した FreshStripsは低コストで運用可能な輸送中の温度変化を読み取りやすくするステッカー。輸送中に食品が不適切な温度にさらされると、食品のパレット・箱に貼り付けておいたステッカーが変色する仕組みだ。

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水道管の水漏れを検知するロボット:Lighthouse

マサチューセッツ工科大学のヨウ・ウーが開発した Lighthouseは、水道管の水漏れを検知するロボットだ。表面は柔らかく柔軟な素材で構成され、地下の水道管の水漏れを見つけるための特別な触覚センサーを搭載している。

使用方法も技術者が既存の給水栓から水道管の中にロボットを挿入するだけと非常に簡単だ。すると、ロボットは水道管の中を流れ、配管エルボを曲がって進み、水漏れ箇所を発見すると、吸引力によってセンサーが引っ張られる。この引っ張る力の強さを計測し、水漏れの位置を記録する仕掛けだ。

給水栓から水道管の外にロボットが排出されたら、技術者は本作品からワイヤレスで水漏れのマップをダウンロードすることもできる。

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マラリア治療向上を目指す診断装置:EXCELSCOPE 2.0【国際準優秀賞受賞】

さて、ここから紹介するのが国際Top20の中から優秀賞を受賞した作品たちだ。最初に紹介するEXCELSCOPE 2.0は、オランダのデルフト工科大学チームが開発した開発途上国におけるマラリア治療向上を目指す診断装置だ。

▲Excelscope. Low cost malaria detection device.

現在、世界の人口のうち、約40%の人たちがマラリアに罹患するリスクのある地域で生活しており、毎年100万人を超える人々がこの病気で命を落としている。本装置は、開発途上国におけるマラリア治療の効率と精度の向上を目指してつくられた、半自動のスマートなマラリア診断装置だ。スマートフォンをタッチして簡単に使用することができる。

>EXCELSCOPE 2.0【国際準優秀賞受賞】の詳細を見る

車椅子利用者の飛行機利用時の負荷を軽減:Air Chair【国際準優秀賞受賞】

もうひとつの国際準優秀賞受賞作の Air Chairは、車椅子を利用する方が飛行機に乗る際の負担をシンプルな解決策だ。アラブ首長国連邦のシャルジャアメリカン大学に在籍するアーメル・シディギとアリ・アスガルによる本プロジェクトは、車椅子利用者が飛行機を利用する際、出発ラウンジから離陸まで、椅子から乗り降りすることなく利用できる1台の椅子を設計したものだ。

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ビル風を利用した都市型の風力発電機:O-wind Turbine【国際最優秀賞受賞】

そして2018年度のJAMES DYSON AWARDにて国際最優秀賞を受賞した作品が、チリ、ケニアと異なる場所で生まれたニコラス・オレリャーナ(Nicolas Orellana)とヤシーン・ヌーラニ(Yaseen Noorani)によるプロジェクト都市型風力タービン、O-wind Turbineだ。

イギリスのランカスター大学の国際イノベーション修士課程で学ぶふたりが開発したこの風力タービンは、幾何学的のベントが付いた球体型の装置が回転することで風の力を電力に変換する発電機。

都市を吹き抜ける風は、ビルの間で捕らえられ、通りに引きずり下ろされ、空へと押し上げられる。いままでは、このような風が急激に無秩序な状態に陥る状況では、従来型のタービンを活用することができなかった。

そこに着目して開発した本作品は、ビルの側面など、巨大な建造物やバルコニーなどの風速が最大となる場所に設置することで、直接の動力源として利用することはもちろん、電力網に供給することもできる。いままで手付かずだった強力な資源を活用できるようになるのだ。

▲O-Wind Turbine: James Dyson Award National UK Winner

受賞者のニコラスは「私たちが望んでいるのは、O-Wind Turbineによってタービンの有用性が向上し、世界中の人々がより手頃な価格でタービンを手に入れられるようになることです。都市は風の強い場所であるにもかかわらず、現在のところ、この資源を有効に活用できていません。環境に優しいエネルギーを容易に生み出せるようになれば、私たち一人ひとりが地球を保護する上でより大きな役割を果たすようになるはずです。国際最優秀賞を受賞したことで、私たちのコンセプトが正しいことが証明されました。これほどの注目を浴びて身の引き締まる思いです。同時に、このコンセプト開発を将来の仕事として考える自信も生まれました。すでに投資者との話し合いに入っており、今後数か月で契約を確保したいと思っています」と述べている。

また、ジェームズダイソンは「問題解決をデザインするという募集課題は、意図的に幅を持たせた表現です。才能ある若き発明家たちに対して、現実のさまざまな問題を突き止めるだけで終わらないようにと促し、工夫を凝らして独創的な解決策を生み出せるように、彼らの背中を押しているのです。O-Wind Turbineは見事にそれに応えてくれています。再生可能エネルギーを作り出すという非常に大きな課題に取り組み、幾何学的形状を採用してこれまで見過ごされてきた、『都市』という場所のエネルギー活用に挑んでいます。これは独創的なコンセプトです」と語り、同作品の中でも特に”コンセプトの独創性”を評価した。

>O-wind Turbine【国際最優秀賞受賞】の詳細を見る

なお、国際最優秀賞受賞者となる、ニコラスとヤシーンには、トロフィーと賞金30,000ポンド(約450万円)を、受賞者が在籍または卒業した教育機関には寄付金5,000ポンド(約75万円)が贈られる。

国内優秀賞

軽量かつ柔軟な把持を実現した5指義手:F3Hand【国内第3位】

続いて紹介するのは、日本の国内審査で優秀賞を受賞した作品たちだ。最初に紹介するのは国内第3位にノミネートした、大阪工業大学大学院 ロボティクス&デザイン工学研究科に在籍する根本 裕介氏が提案した電動義手 F3Hand

▲F3Hand: A Five-Fingered Prosthetic Hand Driven with Curved Pneumatic Artificial Muscles

一般に、5指電動義手は電動アクチュエータにより対象を把持(はじ)できるものの重さや柔軟な把持といった点に課題がある。本作品は、湾曲型空気圧人工筋を用いて駆動する義手となっており、5指が人間の手と同様に配置され、各指が2重関節を備えているだけでなく、湾曲型空気圧人工筋を指の骨格兼アクチュエータとして用いることで軽量化。柔軟な把持と自然な動作を実現した。

>F3Handの詳細を見る

軽量かつ柔軟な把持を実現した5指義手:Origami-hand【国内準優秀賞】

高齢化が進んでいる現在、人手不足や重労働の問題を解決するためにロボットの導入が進んできている。しかし衛生面やコストの問題が壁となり、適用することがまだ難しい環境も多数存在する。

このような課題に対し、東京都立産業技術高等専門学校ものづくり工学科の手塚 蒼太氏が提案したのは、紙などのシート状部品のみを使用しつつも複雑な動作が可能なロボットハンド Origami-handだ。紙で構成することで、低価格で実現できるほか、使用後は交換するなど従来では不可能だった使い方が可能となる。

▲James Dyson Award Origami-hand

>Origami-handの詳細を見る

赤ちゃんへの水分補給を促すスマートおしゃぶり:YourPacifier【国内最優秀賞】

JAMES DYSON AWARD 2018の国内最優秀賞は、山蔦 栄太郎氏ら6名による YourPacifierが受賞した。この作品は、アジア太平洋諸島の病院を訪問した際、下痢で脱水状態になった子どもたちが入院している状況に問題意識をもったことをきっかけに開発されたものだ。

本作品は赤ちゃんが脱水状態の時に、赤ちゃんへの水分補給と保護者の取るべき行動のサポートを行う”スマートおしゃぶり”だ。センサーが赤ちゃんの唇から脱水を検知し、連携するスマートフォンアプリを通じて保護者に取るべき行動を指示。さらにデータを収集・分析することで、病気の流行を検出することができるため、その情報を病院が共有することで感染状況の把握にも役立てられる。

チームリーダーの山蔦氏は「JAMES DYSON AWARD受賞をきっかけに、アイデアに共感してもらえる世界のパートナーを募り、課題の解決に向かって突き進みたいです」とコメント。

また、国内審査員を務めたTakramの緒方壽人氏は同作品について、「技術的にまだ様々な課題もあると思われるが、ヘルスケア分野において、センサーなどのIoT技術によって人間が気づきにくい体のわずかな変化をいち早く検知することは有効なアプローチであり、途上国を含めてグローバルな課題を解決するアイデアとして、今後のさらなる改良による実用化に期待したい。また、医療機関との連携や収集されたデータによるウイルス感染マップの可視化なども視野に入れた提案になっている点も評価した」と語った。

同じく審査員を務めたジャーナリストの川上典李子氏は「ロタウィルスによる乳児死亡率の高さへの関心に始まり、口から得られる多数のバイタル情報に着目、医学専門家もまじえた開発プロセスによって、切実な課題の解決に向かおうとしている意欲を評価したい。脱水状態を始めとする症状を判断できるセンサーやデータ収集でウィルス感染地域の状況を判断できるシステム等、公衆衛生の多様な課題に対するブレークスルーとなりうる可能性を感じる。グローバルに活用されるプロダクトを目ざし、より具体的な検討をぜひとも進めてほしい」と評している。

講評のとおり、プロダクトを超えてデータへの活用という二次利用性を評価された形だ。ビッグデータを用いたAIやその客観性などに関心が集まる中での受賞とも言えるだろう。

さらに川上氏は「エンジニアリング、デザインによって幅広い領域の問題の解決に向かう提案を募るダイソンアワードでは、私たちをとりまく社会に目を向け、課題を掘り下げる視点と思考、実用性をもってさまざまな角度から検証していく過程など、多様な点が求められます。その根底ともなるのは、未来に向けた一人ひとりの展望です。それに向けて推し進めていける柔軟な発想力も不可欠です。このように、今回、様々な点を念頭に国内審査を進めました。受賞3作品として、今後の応用分野の可能性にも満ちた意欲的な内容を選出できました。」と国内審査について総括している。

>YourPacifierの詳細を見る

本稿に掲載しきれなかった各受賞作の詳細は、JAMES DYSON AWARDホームページ上で公開されているので、是非チェックしてみてほしい。

さらに、JAMES DYSON AWARD 2018表彰式セレモニーが2018年12月7日(金)18時よりダイソン株式会社にて開催する予定となっており、国内受賞作品の展示や受賞者によるプレゼンテーション等が予定されている。

残念ながら今年度は国内応募作品から国際Top20に選ばれた作品はなかったが、「問題解決」をベースに新たな価値を提案する場として、JAMES DYSON AWARDを活用する。国内からもそんな若手デザイナーが増えていくことを来年以降も期待したい。End