フランス・パリで伊藤若冲「動植綵絵」の初展示が実現
ジャポニスム 2018の一環で

日仏友好160周年を機に、パリを中心にフランスで開催されている日本文化紹介行事「ジャポニスム 2018」の主要事業のひとつとして、パリ市内にあるパリ市立プティ・パレ美術館にて、伊藤若冲のフランスでの初めての展示「若冲ー<動植綵絵>を中心に」展が2018年9月15日(土)から10月14日(日)の間開催された。

本展覧会は、伊藤若冲(1716-1800)の最高傑作と目される「動植綵絵(どうしょくさいえ)」30幅を、京都の相国寺に伝わる「釈迦三尊像」と共に、パリはもちろんのことヨーロッパで”初めて”紹介するものだ。

会場となった、パリ市内中心部に位置するパリ市立プティ・パレ美術館は1900年パリ万国博覧会の際に建てられた。古代から20世紀初めまで幅広い美術を紹介する、パリを代表する美術館のひとつとされる由緒ある場だ。

美術館の入り口のゲートを抜けると、展示エリアを繋ぐ通路一面に、早速「動植綵絵」を再構成したインスタレーションが連なる。壁面には若冲のプロフィールや作品の詳細を印象的な言葉に編集し、説明がされていた。

インスタレーションの回廊を抜けると、展示エリアの入り口にたどり着く。入り口は改めてインスタレーション内に散りばめられた若冲の説明をまとめて説明するエリアだ。

そのまま進むと、展示空間エリアに到着する。展示空間はそれほど広いものではない。一目で全体が見渡せるほどだ。その中に東京の皇居東御苑内にある、宮内庁三の丸尚蔵館から特別に一ヶ月間の貸し出しを許可された30幅の「動植綵絵」と3幅の「釈迦三尊像」全33幅が壁面前面を囲うように整然と展示される。

これらは若冲の最高傑作との謂れどおり、どの作品も豊かな表現力と特徴的な色遣いが観る者を圧倒する。お馴染みの緻密な描画は、ガラス越しではあるものの自然と覗き込んで鑑賞してしまうほどだ。

展示構成は非常にシンプル。作品の説明文も多くは書かれていない。作品名と制作年が主な内容だ。

これについては、本展のキュレーターでパリ市立チェルヌスキ美術館で日本美術を担当するマヌエラ・モスカティエッロ氏は、「鑑賞者が作品に集中できるように、詳細な説明は、基本的に作品の横ではなく、展示エリア外やパンフレットに記載する形をとった」と語っている。

また、彼女曰く、現地での評価も非常に高く、7500部を初版で用意した展覧会の図録は一週間で完売するなど、異例の盛況ぶりだったようだ。フランスでは浮世絵はすでに有名ということだが、日本画の魅力も本展をきっかけに広がったに違いない。

入り口では開館時間も間も無く、来場者たちが行列を作っていた。現地の盛況ぶりは簡単に計り知ることができるものだった。




現在はパリ市立チェルヌスキ美術館で関連展覧会として、本展でもキュレーターを務めたモスカティエッロ氏がキュレーションに携わった「京都の宝 – 琳派300年の創造」展が開催されている。

ここでは、国宝の風神雷神図屏風がヨーロッパ初公開となっているようだ。日本国内でも公開される機会の稀な琳派の傑作の展示。パリに訪れる際には是非足を運んでいただきたい。End