nendoが手がけた日本美術を紹介する展覧会
「Information or Inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」

▲Photographer: Takumi Ota

東京・六本木のサントリー美術館で2019年6月まで開催された、日本美術を紹介する展覧会「Information or Inspiration? 左脳と右脳でたのしむ日本の美」。その企画と展示デザインを佐藤オオキが主宰するデザインオフィス nendoが手がけた。

鑑賞者が美術作品を前にしたときに、背景にある製作過程や作者の意図や想いなどを知ることで生まれる感動と、ただただ理由もなく心が揺さぶられる感動という、2種類の感動があると仮定。前者を「information(左脳的感動)」、後者を「inspiration(右脳的感動)」と考え、同一の作品に対して2つの異なる鑑賞の仕方を提案した。

▲Photographer: Takumi Ota

このコンセプトに沿って、同館所蔵の日本美術作品から27点を選定。展示空間を真っ白な空間の「information」と真っ黒に仕上げた空間の「inspiration」の2つに分断し、その狭間に作品を配置することで、「1つの展覧会のようで2つの楽しみかたができる」展覧会となった。

▲Photographer: Takumi Ota

3階と4階にまたがる展示室の中間にある吹き抜け空間には、同展のために製作された映像作品「uncovered skies」を展示。日本美術とは切っても切れない「四季」をテーマにしたこの作品もまた、「inspiration」的な要素と「information」的な要素を兼ね備えている。

▲Photographer: Shuntaro

「information」と「inspiration」の順路は、どちらから鑑賞しても、片方だけ楽しんで帰っても良く、展覧会の印象の個人差が大きくなり、鑑賞者同士のコミュニケーションが誘発されることをねらった。

オフィシャルブックも、まるで「1冊の本の中に2冊の本がある」ような構成。左の本の「information」は整理された情報が並び、右の本の「inspiration」は作品のディテールにフォーカスした情緒的な写真のみとした。

▲Photographer: Daisuke Yoshinari

▲Photographer: Akihiro Yoshida

左脳的な美意識と右脳的な美意識に優劣をつけることが目的ではなく、一度両者を意識的に切り離すことで、そこから抜け落ちた価値や、重複した要素、そして浮かび上がる多くの矛盾に気づくことを目指した。この両者の間に横たわる膨大なグレーゾーンの存在とその魅力を再認識することこそが、同展の隠れたメッセージとも言えるだろう。End