小さな海洋生物は日々どんな移動をしている?
NASAの地球観測衛星がその行動パターンの観測に成功

▲Credits: NASA/Timothy Marvel

イカからオキアミまで無数の小さな海洋生物が毎晩、暗闇のなかを深海から海面にかけて漂っている。こうした生物の広範囲にわたる移動は、地球の気候システムにも深く関わっているそうで、これをレーザー光線を使って世界で初めて観測に成功したとNASAが発表した。

今回、NASAフランス国立宇宙研究センターが2006年に打ち上げた地球観測衛星「CALIPSO」を使い、海洋生物が一日のうちで生息する深度を変える「日周鉛直移動(diel vertical migration)」という行動パターンを観察したという。

▲Credits: Chandler Countryman

これは、小さな海洋生物が夜に深海から海面付近に移動し、植物プランクトンを食べ、日の出の直前にまた深海に戻る現象で、世界中でこの移動が毎日行われており、全体の数としては地球最大の生物の移動となる。

この日周鉛直移動は、地球の気候に累積的な影響を与えるだろう。というのも、日中は海の植物プランクトンが光合成で大量のCO2を吸収し、やがて海洋生物が植物プランクトンからCO2を摂取して深海で排泄し、大気中への放出を防ぐからである。つまり、海には大気から温室効果ガスを吸収する能力があるのだ。

この生物を媒介とするCO2の流れは、地球上の炭素循環の重要なメカニズムとなるものだ。今後、日周鉛直移動が気候モデルの重要な要素としてどのように活用されるのか注目しよう。End