魚の切り身にある「V字パターン」はどのようにできる?
シンガポール国立大学の研究チームがメカニズムを解明

魚にはさまざまな色や形、模様があるが、どんな魚にも共通して肉には「シェブロンパターン」と呼ばれるV字型のパターンがある。私たちが寿司ネタのサーモンでよく見る、あの層状の模様だ。しかし、このパターンがどのように生じるのかはわかっていなかった。

そこで、シンガポール国立大学メカノバイオロジー研究所の研究チームは、このパターンが遺伝的でも生化学的なものでもなく、正しく発達するための物理的な力によるものだと発見した。つまり、魚の筋肉は左右に振って泳ぐためのもので、シェブロンパターンは泳ぐ効率を高めるためにできるという。

そもそも発達中の「筋節」(魚の筋線維)は、神経管や脊索、皮膚、腹部組織などの胚組織とつながっているが、そのつながりの強さは筋節形成の過程で異なるので、組織全体で摩擦量に差ができてしまう。また、発達中の筋節の側面は中心部よりも摩擦が大きくなる。こうして新しいセグメントが筋節を前に押すことで、筋節組織に浅い「U」字形が生まれるのだ。

そして、やがて筋節となるものの細胞は、筋線維が形成されるにつれて長く伸び始める。この変形のプロセスから、体節組織内に一定方向に不均質な力が加わり、その結果、「U」字型が特徴的な「V」字型のシェブロンパターンへと尖っていく。

さらに、一定方向へと細胞の再配列が筋節で生じ、新しくできたシェブロン形状は定着していくそうで、細胞の形態と機械的な相互作用の絶妙なバランスからこのパターンはできあがるそうだ。End