NTT、運動中の伸張反射の調整と
脳内情報処理の関連性を発見

▲図1.伸張反射の機能

NTTは、運動を支える脳の仕組みのひとつである「伸張反射」が、視覚による身体情報に依存して調整されることを発見したと発表した。

人間の身体動作は、意識に上らないさまざまな脳の仕組みによって支えられている。そのひとつである「伸張反射」は、意図しない姿勢の変化を素早く修正することで、人間の正確な運動の実行に重要な役割を果たすと考えられている。

▲図2.反射調整のための脳内表現に関する仮説

たとえば、姿勢が変化したときに、この姿勢の乱れを筋の「伸び」として検知し、これに反応して筋肉を「収縮」させる反射を行う。これが伸張反射で、脳を介した修正よりもすばやい反応ができる。「脚気」(かっけ)の検査で、膝下を叩いたときに下腿が跳ね上がるのもこの反射だとされる。

しかし、運動中の伸張反射を適切に調整するための脳内情報処理は、十分明らかになっていないという。そこで、この研究では、運動中の伸張反射応答を調べる実験を行い、身体状態を表す視覚情報に操作を加えることで、反射応答が小さくなることを発見した。

▲図3.同研究で実施した実験課題

▲図4.実験1 – 運動と視覚フィードバックの不一致が伸張反射に及ぼす影響

実験では、手首の屈曲運動を実施。この運動中に外力を加えることで、伸張反射を引き起こし、その大きさを計測・評価した。このとき実験条件として、手の位置を表すカーソルの移動方向に回転変換を加えることで、視覚による身体情報と実際の運動の間に不一致を生じさせた。そして、カーソルの回転変換が大きくなるほど、伸張反射応答は小さくなったという。

今回得られた知見は、人間が素早く正確な身体運動を行うための無意識の脳の仕組みについて、理解を深めていく上で重要な手がかりになるそうだ。

▲図5.実験2 – 視覚フィードバックの消去が伸張反射に及ぼす影響

また、将来的には、アスリートの能力の解析のほか、VRやトレーニング、リハビリテーションなど、人間の身体動作をより深く理解していくことにつながるとしている。End