当たり前と思っていた日常を一変させてしまった新型コロナウイルスの感染。この世界的危機と言える状況下では、多くの情報が行き交い、あっという間に現在が過去になっていくような変化の激しい日々が続いています。
“過去を見つめることから未来をつくり出す”ことを実践してきたクリエイティブユニットSPREADは、コロナ禍において行動を起こしたクリエイティブな活動をリサーチし、未来を考えるヒントを探ります。本ウェブでは、SPREADが特に注目するものを毎日1本ずつ紹介していきます。
今日のトピック
ロイヤル・カレッジ・オブアート(Royal College of Art)とインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)に在籍する学生、サンディープ・フンジャンさん(Sandeep Hoonjan)とチャンジ・ツァンさん(Xianzhi Zhang)は、音声と触覚を連動させるデバイス「Feel the Conversation」を制作しました。受話器に話しかけると、イントネーションと声のボリュームに合わせて、耳元についているブラシが動く仕組みになっています。
SPREADはこう見る
世界中の人々が自宅待機をした結果、長期間友人や家族に会えず、心細い思いをしていた人は多かったはずです。「Feel the Conversation」は、通話しながら触覚という物理的な刺激の情報をリアルタイムで届けることにより、安心感を与え親交を深めるためのアイデアです。これまで無意識に行なっていた、触れ合うことによる感情表現が制限されるいま、寂しさを感じている人々に求められるかもしれません。
このデバイスのユニークな形状は、見る者の興味を引きます。青いブラシは、シリコン製ですが、開発段階では、ほかにも羽毛、布、革などが試されました。また、ブラシを舌のアタッチメントに付け替えることができます。舌はかなりリアルで、顔に近づけるのはためらわれますがユーモアもあり、同時にどんな感じなのか、試してみたいという好奇心を抱かせます。
人は物理的な刺激を求めたがるのかもしれません。例えば、映画の4DX上映は、シーンに連動して座席が揺れたり、匂いを感じたり、水しぶきをあびたりする臨場感で私たちを楽しませてくれます。「Feel the Conversation」を毎日使う必要はないかもしれませんが、たまに使うことで、スマホとは違う新しいコミュニケーションを楽しめるかもしれません。耳元をくすぐられて笑う回数が増えるだけでも、会えない寂しさを補う方法になるのではないでしょうか。
Sandeep Hoonjan
生物科学、コンビューターサイエンスを学んだ後、国立情報学研究所でVRを使った脳卒中患者の神経リハビリテーションのリサーチに携わる。現在、ロイヤル・カレッジ・オブアートとインペリアル・カレッジ・ロンドン在籍。イノベーション・デザイン・エンジニアリング専攻。
Xianzhi Zhang
ロイヤル・カレッジ・オブアートとインペリアル・カレッジ・ロンドンに在籍。工業デザインを専攻。